著者
小林 一三 山崎 三郎 黒田 敏夫
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.21-28, 1973-01-25
被引用文献数
1

茨城県下から採集したマツカレハ幼虫を材料として, 人工照明の影響のない3m×3m×2.5mの大型ケージを用いて成虫の羽化の様子とその後の成虫の行動を調べたところ, 次のような結果を得た。1)羽化は7月中旬を盛期として行なわれ, その羽化曲線はピークが羽化開始日の方に傾き, 尾を終了日の方へひいた型となった。この傾向は雌よりも雄の方が著しいため, 羽化期を通じての毎日の羽化成虫の性比は初期には0.5より小さく, 盛期に0.5,後期には0.5より大と漸増した。2)1日における羽化時刻は午後5時から11時までの間であって, 雄は雌よりも早い時刻に羽化し, そのピークは日没前の7時ころ, 雌では日没後の8時ころであった。この場合の雄雌のちがいは同型の曲線が約1時間のずれを持ったちがいであって, 1)の性比の変化と共に交尾を確実にする上で役立つものと思われる。3)羽化した成虫は30分ほどで翅の伸張を終え, 雄ではその後2時間ほどで飛行した。雌は翅の伸張を行なった場所に止まって深夜を中心とした時間帯に交尾を行なった。日中は静止を続け夕刻から活動を開始し, その後, 雌はただちに産卵を始め, 夜9時ころまでが産卵の時間であった。夕刻7時30分と明方4時を中心としたl0〜20分間にややはっきりとした飛行の集中する現象がみられた。