著者
山崎 美香 岩佐 真弓 山上 明子 塩川 美菜子 井上 賢治 若倉 雅登
出版者
日本神経眼科学会
雑誌
神経眼科 (ISSN:02897024)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.137-147, 2023-06-25 (Released:2023-07-11)
参考文献数
15

我々は,新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)ワクチン接種後,2か月以内に発症した視神経炎を5例経験した.2例(症例1,2)は典型的な抗myelin oligodendrocyte glycoprotein(MOG)抗体陽性視神経炎で1例目は片眼,2例目は両眼発症であった.3例目は,非典型的な両側抗MOG抗体陽性視神経炎にぶどう膜炎を併発していた.4例目は,非典型的な両側視神経炎であり,視神経周囲炎様の所見と著明なくも膜下腔の拡大を伴っていた.5例目は,非典型的な片眼抗MOG抗体陽性視神経炎であり,ワクチン接種から活動的な進行がみられるまで,約2か月を要していたが,ワクチン接種時期と視神経炎の発症の時期から,SARS-CoV-2ワクチンの副反応の可能性を十分考慮すべきと考えた.今回経験した5症例は,それぞれ,全く異なる臨床所見を示しており,SARS-CoV-2ワクチン接種後の視神経炎は,典型的な視神経炎を呈する症例から,一見視神経炎以外の疾患を疑うような非典型的な視神経炎まで,多様な臨床像を呈する可能性がある.また最も注目すべきことは,5例中4例で抗MOG抗体陽性であったことであり,ワクチン接種と抗MOG抗体陽性視神経炎がどのように関連しているのか,その真偽と機序の解明を待ちたい.