著者
山崎 賢也
出版者
富山救急医療学会
雑誌
富山救急医療学会 (ISSN:21854424)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.4, 2021-09-04 (Released:2021-11-17)

現在、高岡市消防本部に登録されている救急救命士は、救急振興財団の救急救命研修所を修了した救急救命士(以下「研修所救命士」という。)と、大学・専門学校による救急専門課程を修了した救急救命士(以下「学校救命士」という。)の2つの教育課程を経てきた者が救急救命士として勤務している。それぞれの救急救命士は資格取得までの過程が異なっており、研修所救命士は、2,000時間又は5年以上の現場経験を積んだうえで救急救命士になるのに対し、学校救命士は教育課程の中での資格取得のため、病院実習や同乗実習の機会はあるが、総じて現場経験が浅いのが現状であり、新任の学校救命士が現場活動をするうえで、研修所救命士との知識や技術、現場経験の差から不安を感じている者もいると思われる。 今回、学校救命士が抱える現場活動への不安の要因についてアンケート調査したところ、研修所救命士との現場経験の差や生体への観察技術に差を感じているという結果となった。 本市では、平成28年から救急隊員生涯教育制度により就業前病院実習までに知識、技術の確認を行うようになっており、学校救命士と研修所救命士とでは、知識、技術的な差は救急隊員生涯教育によって補えていると考える。 このことから、生体への観察技術を身に着けていくためには、生体を使った実測訓練を取り入れるなど、現場に即した訓練を実施することが必要だと考えられる。 また、出動後に現場活動の振り返りを常に実施することで、隊員間のコミュニケーションを促進させるとともに、知識の向上を図ることで、少ない現場経験の差を埋めていく必要があると考察する。