著者
横山 昂史
出版者
富山救急医療学会
雑誌
富山救急医療学会 (ISSN:21854424)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, 2019

【はじめに】<br> 今回、救急活動中に妨害・暴行行為を受け、対応に苦慮した症例を経験したので紹介する。<br>【症例】<br> 60歳代男性、体調不良を訴え救急要請したもの。<br> 救急隊到着時、酩酊状態で救急隊の観察等に応じない状態。<br> 一緒にいる妻及び救急隊に暴言を吐き、また足で蹴るなどの暴行行為を受けたため、救急隊のみでの活動は困難と判断し、警察官を要請。<br> 現場到着した警察官のパトカーを足で蹴り、パトカーを損傷させ現行犯逮捕された。<br>【経過】<br> 今回の症例について当消防本部で会議を開催し、反省事項、今後の対応方法について検討した。<br> また、所管警察署に救急活動中に妨害・暴行行為を受けた場合の対応方法についても意見を求めた。<br>【考察】<br> 会議結果及び警察署からの回答を受け、救急隊としての対応方法、活動の方針について考察した。
著者
樋口 正樹 打越 学 島崎 哲弥 山路 修平 山田 智樹 岡崎 博樹 加納 春洋
出版者
富山救急医療学会
雑誌
富山救急医療学会 (ISSN:21854424)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.9, 2020-09-12 (Released:2021-02-06)

A病院は県庁所在地であるB市内にある2次救急病院であり感染症指定医療機関に指定されている。県内の感染者の発生は他県に比較し遅れていたが、最初の陽性確定者から接触者の感染、立ち寄り先での感染などで一気にクラスターが発生し多くの感染者が発生することとなった。それに伴いA病院での入院対応、B市保健所より接触者の受診、PCR検査の依頼が急増し担当者はその対応が困難な状況となった。A病院において事業管理者の命にてCOVID-19対策本部(以下対策本部とする)の立ち上げを行うこととなり対策本部事務局(以下事務局)の運営をA病院DMAT隊員にて行うこととなった。院内は通常医療、Covid-19 対応の2本柱での運営を方針として対応を行っていた。そのような対応を行う中で、A病院内X病棟においてスタッフの感染が確定、その後相次いでスタッフ、患者の感染が確認されクラスターが発生した。A病院の感染拡大の他にB市内では老人保健施設、デイサービス、障害者施設など数か所でクラスターが発生していた。 そのような中で院内対応に加えA病院ではDMAT隊員によって担った業務に患者搬送がある。今回、クラスターが発生したA病院において院内対応中で行った患者搬送を振り返り検証を行うことで今後の感染対策、患者、傷病者搬送の一助とするべく検証を行うこととした。
著者
山崎 賢也
出版者
富山救急医療学会
雑誌
富山救急医療学会 (ISSN:21854424)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.4, 2021-09-04 (Released:2021-11-17)

現在、高岡市消防本部に登録されている救急救命士は、救急振興財団の救急救命研修所を修了した救急救命士(以下「研修所救命士」という。)と、大学・専門学校による救急専門課程を修了した救急救命士(以下「学校救命士」という。)の2つの教育課程を経てきた者が救急救命士として勤務している。それぞれの救急救命士は資格取得までの過程が異なっており、研修所救命士は、2,000時間又は5年以上の現場経験を積んだうえで救急救命士になるのに対し、学校救命士は教育課程の中での資格取得のため、病院実習や同乗実習の機会はあるが、総じて現場経験が浅いのが現状であり、新任の学校救命士が現場活動をするうえで、研修所救命士との知識や技術、現場経験の差から不安を感じている者もいると思われる。 今回、学校救命士が抱える現場活動への不安の要因についてアンケート調査したところ、研修所救命士との現場経験の差や生体への観察技術に差を感じているという結果となった。 本市では、平成28年から救急隊員生涯教育制度により就業前病院実習までに知識、技術の確認を行うようになっており、学校救命士と研修所救命士とでは、知識、技術的な差は救急隊員生涯教育によって補えていると考える。 このことから、生体への観察技術を身に着けていくためには、生体を使った実測訓練を取り入れるなど、現場に即した訓練を実施することが必要だと考えられる。 また、出動後に現場活動の振り返りを常に実施することで、隊員間のコミュニケーションを促進させるとともに、知識の向上を図ることで、少ない現場経験の差を埋めていく必要があると考察する。
著者
東海 達大 桐澤 聡邦 開田 達弥
出版者
富山救急医療学会
雑誌
富山救急医療学会 (ISSN:21854424)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, 2019

【背景】<br> 昨今の高齢化社会の影響で、高齢者福祉施設からの救急要請件数が増加しており、さらに現場滞在時間が全国平均を超えている消防本部が多く見受けられる。また、平成28年度救急業務のあり方に関する検討会報告書において、福祉施設と救急隊間での情報収集シートなどの活用促進が検討された。<br> 当本部でも目撃した施設職員が不在であったり、また聞きのため詳細がわからなかったりして患者情報の聴取に時間がかかる等、現場滞在時間が延長しているのが現状である。<br>【目的】<br> 「情報伝達カード」を利用することで、円滑に情報提供を受けることができる体制を構築し、現場滞在時間等の短縮を図る。<br>【対象と方法】<br> 市内28箇所の福祉施設に、救急隊が必要とする項目を一覧にした「情報伝達カード」を事前に配布した。救急隊到着時の救急隊への提供の有無を調査し、提供があることで現場滞在時間等の短縮につながっているかどうかを確認する。<br>【結果】<br> 平成30年、当救急隊出場件数1259件中、福祉施設へは77件出場している。うち、カードの提供ありは39件、なしは38件だった。現場滞在時間、接触から連絡(収容依頼)開始、車内収容から連絡開始の何れも、カードの提供があることで若干の時間短縮はみられたが、有意差はなかった。<br>【考察】<br> まだまだ施設職員に浸透しておらず、使用されなかった事案が約半数あった。救急通報受信時またはプレアライバルコールにて、カードの提供を依頼することで使用回数を増やしたい。また、今後は福祉施設と連携訓練等を実施し、必要な項目の共通認識を持つとともに、施設側の意見も取り入れていきたいと考えている。
著者
大坪 幸代 奥寺 敬 若杉 雅浩
出版者
富山救急医療学会
雑誌
富山救急医療学会 (ISSN:21854424)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.15-16, 2019-08-31 (Released:2019-10-07)
参考文献数
4

富山県において開発されたGF13001は、経口補水液として海洋深層水由来の水に電解質を配合しており、組成は一般的に提唱されている経口補水液に適合している。今回Ⅰ度〜Ⅱ度の脱水症モデルにおいて、GF13001が個別評価型病者用食品に求められる効果を示すかとして適しているか評価をし、先行品であるOS-1と同等の有用性を認めた。
著者
東 洋一
出版者
富山救急医療学会
雑誌
富山救急医療学会 (ISSN:21854424)
巻号頁・発行日
vol.35, 2017

・はじめに<br>ガイドライン2015において病院前12誘導心電図の推奨が再強調され、救急隊接触から90分以内のPCIを目標とすると明記された。それを踏まえ氷見市救急隊においても平成28年から12誘導心電図を記録した症例がみられるようになった。それらの症例についての報告と今後期待される展望について紹介する。<br>・症例<br>症例1:47歳男性階段から転落し意識がないとの指令。接触時、階段にもたれるように座っており、JCS2桁、橈骨動脈弱く触知、明らかな外傷見られずアルコール臭強い。<br>既往にDMと心疾患、HR40→車内で心電図記録した症例<br><br>症例2:87歳女性、急激な腹痛が出現し嘔吐、その後胸痛を訴えぐったりし救急要請。通報段階で指令員がCPAと判断しドクヘリ要請。接触時JCS2桁、橈骨触れず、総頸微弱で冷感著明でショック判断、除細動パッド装着ワイドQRSでST低下がみられ、RP到着までに心電図記録した症例<br><br>・考察<br>症例1では意識障害の原因が他にも挙げられ複合的な病態の可能性も否定はできないが、病院での原因療法までの時間短縮には12誘導記録が有用だったと考えられ、症例2ではドッキング時に医師による心電図評価が可能となることから現場での診断、治療及び病院選定に有用だったと考えられる。<br><br>・現状課題と今後期待される展望<br>富山県においても、ICTシステムの導入により従来の電話による情報伝達より精度の高い情報を現場から送信することで、病院前での大まかな診断の目安となり、治療開始までの時間短縮に繋がり良好な転帰となることが期待される。
著者
奥寺 敬 若杉 雅浩
出版者
富山救急医療学会
雑誌
富山救急医療学会 (ISSN:21854424)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.17-19, 2019-08-31 (Released:2019-10-07)

最近の国内外の自然災害の動向としては、「異常気象」に起因する様々な事象が散見される。特に夏季になって、アメリカやヨーロッパ、国内でも明らかに「熱波」による気象災害が頻発している。また、自国第一主義の蔓延による国際情勢の不安定化による暴力行為や難民問題などが顕在化している点にも今後とも注意が必要である。国内では、依然として福島第一原発の廃炉作業は困難な状況が続いており、各地の災害の復興も順調とは言えない。その一方で、2020年に開催される東京オリンピック・パラリンピックの準備は、総力をあげて進められており、復興災害とのミスマッチが懸念される。このような複雑な状況下において、これまでのSociety 5.0から国連が提唱する「持続可能な開発目標 SDGs」(Susteinable Development Goals)を我が国のゴールとする指針が示され対応が喫緊の課題である。
著者
中村 真司 中川 貴美子 原田 樹 栗田 康寿 藤井 真広 伊藤 宏保 菊川 哲英 吉田 昌弘
出版者
富山救急医療学会
雑誌
富山救急医療学会 (ISSN:21854424)
巻号頁・発行日
vol.33, 2015

【はじめに】多数傷病者発生事案では分散搬送が原則であるが、医療圏を越えての搬送は実際には難しい。今回、4人家族の交通事故において分散搬送し、状態安定後再集約する事案を経験した。<br>【症例】トンネル内での軽自動車と4tトラックの衝突事故。軽自動車乗車中の4人(両親、長男、長女)が受傷した。救急隊トリアージにて父親は骨盤骨折疑い、母親は大腿骨骨折疑い、子供2人は心肺停止であった。砺波医療圏MC医師の判断により、母親、長男は市立砺波総合病院へ、父親および長女は当院へ搬送された。<br>症例1: 2歳女児。来院時心肺停止。病着後8分、受傷後54分で心拍再開した。全身CTで外傷性くも膜下出血、高度脳腫脹、頸部血管損傷疑い、骨盤骨折、左大腿骨骨幹部骨折を認めた。脳腫脹強く、神経学的な改善は望めない状熊であった。<br>症例2: 28歳男性。右股関節脱臼骨折を認め、整復後にICU入室となった。<br>女児が重度脳機能障害のためBSCの方針となり、家族の集約を目的に、父親が第3病日に、女児が第4病日に市立砺波総合病院へ転院となった。なお、母親は大腿骨骨折、長男も心肺停止であったが、蘇生に成功した。<br>【考察】3次病院においても、小児2名の外傷CPAの初療は難しい。また、救急隊の判断による医療圈を越えた分散搬送は現実には難しい。今回はオンライン指示によるMC 医師の調整により、2名とも心拍再開することができた。現場医師要請、あるいは県全体のルール策定などにより、よりスムーズな現場分散搬送体制の構築が重要と思われた。<br>【まとめ】今回、我々は4名の傷病者、うち2名が小児の心肺停止であった事案を経験した。分散搬送することにより2名の心肺停止の小児を蘇生することができた。
著者
守谷 俊
出版者
富山救急医療学会
雑誌
富山救急医療学会 (ISSN:21854424)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.20, 2019-08-31 (Released:2019-10-07)

埼玉県は現在も人口増加が認められ、救急要請件数も増加の一途を辿っている。急な病気やケガの際に一般市民が使用できる「#7119」は、電話による緊急度判定を行うシステムとして2007年から小児救急電話相談、2014年から大人の救急電話相談を開始した。2017年には相談時間を24時間化しているが、その利用件数は年々伸びていたことから、いずれは県民に対する救急医療サービスを維持するには困難な状況が予想された。埼玉県では知事が提言した「スマート社会へのシフト」という新たなビジョンの医療へAI(人工知能)の応用の中で計画が持ち上がり、チャットボット(自動応答ソフトウェア)による救急相談(埼玉県AI救急相談)を、2019年4月19日(金)午後3時から全国で初めて試験導入することとなった。 AI相談を実現化するために対策を考慮した点を以下に示す。 ●フリーに入力した訴えを108パターンの症状別のどれに最終的には紐付けするか ●電話相談との回答に齟齬は発生しないのか ●緊急度の分類は適切か ●ふたつの症状を相談した時はどうするのか ●AI相談が不適当な場合の責任はどうなるのか ●AI相談に向いていない症状は何か ●手軽に使ってもらうためにはどうすれば良いか ●「言葉の揺らぎ」における同義語集約は完全に可能か ●119番の必要な場合にどう画面構成を考えたら良いのか ●AI救急相談はどうあるべきなのか 【今後の展開】 「AI救急相談」におけるAIデータの動的な情報は、急な病気やケガによる救急相談の利便性向上と、適正受診の推進による救急医療機関の負荷軽減に向けて、救急医療における病院前医療の限りない需要拡大の可能性を吸収できるかもしれない。