著者
山川 宣大 小堀 聡
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.55, pp.402-403, 1997-09-24
被引用文献数
1

学習についての研究を行うには, 人間の脳における情報処理過程の解明や, コンピュータでのシミュレーションによるモデルの妥当性の検証が必要である。そこで, 本研究では複雑な思考を要する'Calculation'というカードゲームを題材にして, 人間の情報処理過程について検討することを目的としている。Calculationを取り上げた理由は, 解法自体が確立されていないこと, 成功率が学習によって大きく改善されるということにあり, 人間の学習過程を解析するのに適当な問題であるといえるからである。Calculationというゲームは, トランプを用いて行う一人遊びである。よく切った手札を順番にめくり, ある規則の通りに台に札を並べるが, その際に作業領域として場を使うことができる。場をうまく使いながら, 手札をすべて台に並べることができれば, 成功である。このゲームは, 初心者のうちはほとんど成功しないが, プレイを重ねるうちに成功率も上がり, 熟達者にもなれば95%以上になるといわれている。つまり, 成功させるためには何か重要なキーポイントがあり, 人間はそれを経験から獲得すると予想される。Calculationに関してのこれまでの研究では, 人工知能的な研究として, ゲームをプレイするプログラムがいくつか開発されたが, 95%以上という人間の熟達者の成功率を超えるものはまだなく, 成功率の比較的高いものも人間の方略を完全にまねしたものとは異なるようである。このようにCalculationはとても興味深いゲームであるので, 認知科学, 人工知能, ヒューマンインタフェースという3つの視点からの研究が可能であると考えられる。本論文は, 特に熟達者のプレイに着目し, 分析した結果についての報告である。