著者
山形 恭子
出版者
一般社団法人日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.310-319, 2012-09-20

本研究では絵本における文章の読みに関する表記知識・手続き的知識の発達を4側面から捉え,ひらがな読字能力との関連のもとに検討した。調査対象児は2歳半から4歳の年少児40名(研究1)と4歳から6歳の年長児66名(研究2)である。絵本課題では絵本を読み聞かせながら質問をする対話方式を用いて絵本に関する手続き的知識,文字表記知識,読みの手続き的知識,意味理解の4側面に関する理解を発達的に調べた。結果はこれらの4側面の理解に関して3段階の発達様相が見出された。2歳半児は絵本に関する手続き的知識や文字同定,頁間の方向性,意味内容を理解していたが,読みの手続き的知識と文字表記知識の理解は年齢にともなって発達した。特に,読みの手続き的知識のなかの最初の頁の読みの始点に関しては4歳以下では理解できず,4歳以上の年長児で年齢にともなってその理解が進展した。また,読みの手続き的知識と文字表記知識はひらがな読字能力と有意な相関がえられ,読字能力の習得が関連した。これらの結果は絵本読みにおける表記知識・手続き的知識の発生・発達過程ならびに文字の習得との関係や方法論に基づいて考察された。