著者
市之瀬 敏晴 山方 恒宏
出版者
日本比較生理生化学会
雑誌
比較生理生化学 (ISSN:09163786)
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.108-115, 2017-12-28 (Released:2018-01-17)
参考文献数
60

ドーパミンは睡眠,学習や求愛行動など,動物のさまざまな行動を制御する。中脳ドーパミンニューロンは,報酬刺激に対する一過的なバースト発火を生理学的特徴とするが,その多くは,外界からの刺激がない状態でも内因的な神経活動を示すことが知られている。先行研究により,このドーパミンニューロンの「自発活動」は,学習などの脳機能に重要な役割を果たすことが分かってきた。しかし,行動との因果関係やその作用メカニズムについては,未だ不明な点が多い。近年,モデル生物であるキイロショウジョウバエDrosophila melanogasterの脳内においてもドーパミンニューロンが自発的な活動を示すことが分かってきた。最新の生理学的手法,および遺伝学的アプローチにより,ショウジョウバエの行動および内的状態がこの自発活動に反映されており,その変化は個体レベルの行動に直接的に影響することが明らかとなりつつある。さらに自発活動の制御に関わる分子やドーパミンニューロンの局所回路も同定されつつある。本総説では,ショウジョウバエを中心とした最新の知見をまとめ,ドーパミンニューロンの自発活動が動物の行動制御において果たす意義について考察したい。