著者
山本 博崇 高橋 善明 渡部 広明 松岡 哲也
出版者
日本腹部救急医学会
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌 (ISSN:13402242)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.661-665, 2013-03-31 (Released:2013-06-07)
参考文献数
11

症例は60歳代,男性。塩酸を内服し,救急搬送となった。精査にて腐食性食道・胃・十二指腸炎,重症急性膵炎,溶血性貧血と診断し,ICUにて集中治療を行った。膵炎と溶血性貧血は大量輸液,ハプトグロビン,膵酵素阻害剤,抗潰瘍薬の投与を行い改善したが,食道と幽門の瘢痕狭窄が徐々に進行した。第149病日には幽門の完全閉鎖を認めたが,経過中に重度の肺線維症を併発したため根治術を断念し,胃空腸吻合術を施行した。しかし,その後も瘢痕狭窄は進行し,第302病日には食道の完全閉鎖を認めた。塩酸内服後の消化管瘢痕狭窄に対する手術や内視鏡治療は6ヵ月後以降に行うべきとされているが,本症例のように10ヵ月まで狭窄が進行する症例も存在するため,瘢痕狭窄に対する治療も10ヵ月以降まで延期すべきである。また,手術術式は消化管障害の範囲と程度,および全身状態に左右されるため,初期の全身管理も重要である。
著者
山本 博崇 本間 陽一郎 浜野 孝
出版者
日本腹部救急医学会
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌 (ISSN:13402242)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.81-84, 2010-01-31 (Released:2010-03-03)
参考文献数
11

症例は22歳の男性。緩徐に増強する腹痛と嘔吐を主訴に当院救急外来を受診した。身体所見,画像所見より腸閉塞が疑われた。腸管虚血も否定できないため,緊急手術を施行した。開腹し腹腔内を検索したところ,Meckel憩室が食塊で充満され,小腸の通過障害をきたしていた。憩室を含む小腸を切除し,手術を終了した。切除した組織には炎症所見は認めなかった。本症例はMeckel憩室による腸閉塞の分類(Rutherford分類)に当てはまらず,まれな症例と考えられた。