著者
山本 恵理 佐々木 良一
雑誌
研究報告コンシューマ・デバイス&システム(CDS)
巻号頁・発行日
vol.2015-CDS-12, no.26, pp.1-8, 2015-01-19

近年,自分で自分の健康を管理するヘルスケアへの関心が高まっている.ヘルスケアを目的とするデバイスとして用いられるウェアラブルデバイスは,WBAN(Wireless Body Area Network) とよばれる人体を中心とした無線通信により,ハブ端末であるスマートフォンやタブレットとの通信が行われている.この WBAN は,IEEE 802.15.6 によって規格が策定されており,物理層として UHF 帯狭帯域通信,超広帯域通信 (UWB),人体通信 (電界方式) の三種類が技術仕様として定められている.我々はこの中でも,ウェアラブルデバイスへの搭載が期待されている,消費電力の少ない人体通信について着目した.人体通信機能がウェアラブルデバイスへ実際に搭載された事例は ID カードと玩具の数例しかなく,その通信の安定性については,まだいくつかの課題が残されている.そこで著者らは,ハブ端末とウェアラブルデバイス間の通信を,人体通信を用いて行う場合の人体上の伝搬特性と周波数特性について,21MHz と 455kHz の搬送波周波数を用いて測定を行った.この結果,21MHz に比べ 455kHz の搬送波周波数を使用した場合,安定した通信が行えることを確認した.この結果を用い,455kHz の搬送波周波数を使用し,人体通信で情報を送信または受信するウェアラブルデバイスの製作と,受信した情報をスマートフォンで可視化するためのアプリケーションの開発を行い,さらに,人体通信の実用化のため,通信の安全性を考慮し,AES を用いて通信傍受対策を行った.これにより,雑音にそれほど強くない符号化 ASK でも,手先や顔の周辺では人体通信でウェアラブル機器同士の通信が十分行えることを確認したが,足付近では雑音によって情報が誤って受信されるという課題が残った.今後、雑音対策として FEC の実装を行い,消費電力に考慮した対策を行っていく予定である.