- 著者
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山本 成志
田崎 武信
後藤 昌司
- 出版者
- 日本計算機統計学会
- 雑誌
- 計算機統計学 (ISSN:09148930)
- 巻号頁・発行日
- vol.5, no.1, pp.1-9, 1992-05-16
- 被引用文献数
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本報告では,二つの治療(薬剤)を二つの期で試験する2治療2期のクロスオーバ試験に限定し,臨床試験におけるクロスオーバ・デザインの適用の是非を再検討する.とくに,文献にみられるクロスオーバ・デザインの肯定論と否定論の系譜を提示する.そして,クロスオーバ・デザインのアキレス腱ともいうべき持ち越し効果の問題を配慮して,試験の「計画」段階における,第1治療期と第2治療期の間の洗い流し(wash-out)期間の設定,治療の被験者心理への侵襲性(治療の盲検化),応答(評価指標)水準の経時的な変化,被験者の治療順序群への割付けでのバランス,への注意を喚起する. クロスオーバ試験成績の「解析」段階で持ち越し効果が検出された場合に,事後的に対処できる一つの手段として,応答観測値の変換を考えた.実際に,ベキ変換と交替条件付き期待値(ACE)に基づいて5種の文献例を再解析した結果,持ち越し効果は変換によっても救済されにくいことが示唆された,したがって,クロスオーバ・デザインの適用では,計画段階での事前の検討がとりわけ重要となる.最後に,クロスオーバ試験が比較的に多用されている臨床分野について触れる.