著者
岩崎 学
出版者
応用統計学会
雑誌
応用統計学 (ISSN:02850370)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1-2, pp.43-54, 2022 (Released:2023-01-12)
参考文献数
36

昨今,統計・データサイエンスが大いに広がりを見せ,データ分析に携わる人々の数も増加しつつある.その中で,統計学の教育や訓練がやや不足がちの人たちもいることから,「因果」と「相関」について,特に回帰分析の枠組みで考える.また近年,オープンデータの利活用が話題となっている.この種のデータの特徴は,集計データであることである. そこで,集計データから個人の行動を推論する方法論としてのエコロジカルインファレンスが重要性を帯びてくる.本稿では,身近な例を取り上げ,それらの分析結果を提示すると共に,その解釈について詳しく議論する.特に,回帰分析の3つの役割である「記述」,「予測」,「制御」の違いを明確にすべきであることを強調する.また,それらのデータは集計データであることから,エコロジカルインファレンスのいくつかの技法を適用した結果も示す.例を2つ示したが,それらは全く同じ数値でありながらコンテクストが違うものである.したがって,解析の数値的な結果は全く同じであってもその解釈が異なっている. 本稿で伝えたいメッセージの第一は,データは数値と背景情報からなることという認識である.コンピュータのできるのは「数値解析」であり,「データ解析」を行うためには背景情報を十二分に吟味しなくてはいけないことを改めて伝えたい.
著者
松田 孟留
出版者
応用統計学会
雑誌
応用統計学 (ISSN:02850370)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.1-11, 2020 (Released:2020-08-28)
参考文献数
11
被引用文献数
1

競技かるたとは,百人一首の札を取る速さを競うスポーツである.上の句が詠み上げられるのを聞いて対応する下の句の札を取り合うが,どの札が詠まれたか一意に定まる最初の数文字のことを決まり字とよぶ.たとえば,「ち」で始まる札は3枚あり,決まり字はそれぞれ「ちは」「ちぎりき」「ちぎりお」である.しかし,実際には決まり字を聞くよりも早い段階で札が識別できるという選手も多い.そこで本研究では,ベイズモデルを用いた音声解析によって,札による詠み音声の違いがどの時点で生じるかを調べた.選手が詠み音声を聞いて札を識別する過程を逐次ベイズ推定として定式化し,詠み音声の生成過程を隠れマルコフモデルでモデル化した.すなわち,選手は詠み音声を聞きながら札の事後分布を逐次更新し,事後分布が1つの札に集中した時点で札を識別すると仮定し,札の事後分布の更新には隠れマルコフモデルの周辺尤度を用いるとした.このモデルを用いて「おおえ」「おおけ」「おおこ」の3枚の詠み音声データで実験した結果,「おお」の段階でこれらの札を識別できることが確認された.
著者
五所 正彦 丸尾 和司
出版者
応用統計学会
雑誌
応用統計学 (ISSN:02850370)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.53-65, 2017 (Released:2017-12-27)
参考文献数
46
被引用文献数
1

データの欠測は,臨床試験の結果をゆがめ,解釈を困難にする重大な問題である.mixed-effects models for repeated measures(MMRM)は,線形混合効果モデルの一種で,不完全な経時測定データを解析するために利用される統計モデルである.特に医生物学の分野で急速に普及しており,臨床試験においては主要な解析に採用されることも多い.本論文では,MMRMに基づく解析を取り上げ,この方法の原理や性質,固定効果パラメータの推定ならびに統計的推測の方法を概観する.また,実際のデータにMMRMを適用する際の具体的な指定方法や注意点を紹介する.
著者
小池 宏明
出版者
応用統計学会
雑誌
応用統計学 (ISSN:02850370)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1-2, pp.19-29, 2022 (Released:2023-01-12)
参考文献数
12

Evidence-based medicineは,昨今,臨床医学の意思決定の重要な根拠となってきていますが,それは二重盲検プラセボ対照試験の統計学的解析に基づいています.そして,近年,その解析にはCox比例ハザードモデルが用いられ,それにより臨床試験の参加者のヘテロジェネイティーの相違が,より詳細に解析結果に反映されるようになってきました.それにも拘らず,通常,ある試験で有意差をもって治療効果が認められた場合には,その試験と同様な患者群に普くその治療が行われています. しかし,その有意差が,その群の中の一部のみにその効果がもたらされた事,すなわち,レスポンダーの存在に由来する可能性は常にあり,しかも,ヘテロジェネイティーは全て既知の危険因子などから構成されているため,レスポンダーの存在が未知の交絡因子に由来している場合,通常のサブグループ解析ではその存在が不明なまま残ることになります. この論文は,レスポンダーの存在の有無を,赤池情報量規準(AIC)を用いて推定する方法を提案したものです.ただし,ここでは,治療群及びプラセボ群をセットとした統計量にそれを用いるためにひと工夫を要しました.
著者
川野 秀一 村田 右富実 Shuichi Kawano Migifumi Murata
出版者
応用統計学会
雑誌
応用統計学 (ISSN:02850370)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.1-13, 2019

万葉歌の研究において,歌の音の使用傾向から歌人の特徴を捉える場合がある.それぞれの歌人の使用している音の癖を読み取ろうとするものである.しかし,これまでは歌内で多く使用されている,もしくはほとんど使用されていない単一の音のみに着目した単変量的な解析や主観的な判断がほとんどであった.本論文では,複数の音を考慮に入れた統計解析を実行し,歌人の分類ならびにその音に基づいた特徴付けについて考察する.具体的には,まず,柿本人麻呂,山上憶良,大伴旅人の3 歌人の短歌に着目し,各短歌内で使用されている音節から特徴量を作成する.その後,得られたデータに対してスパース正準判別分析を適用することにより,歌人の分類と各歌人に特徴的な音節の選択を行う.
著者
白石 高章
出版者
応用統計学会
雑誌
応用統計学 (ISSN:02850370)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.1-17, 2011 (Released:2012-03-21)
参考文献数
15
被引用文献数
3 4

多群2項モデルにおいて,母比率の間の相違に関しての多重比較検定について論じる.比率の間のすべての差の同時区間推定法が,Hochberg and Tamhane (1987) で述べられている.この手法と同様なシングルステップのTukey-Kramer型検定方式を構築することができる.しかしながら,この検定方式は保守度が未知パラメータに依存し制御することができない.この論文では,逆正弦変換による多重比較検定法を提案し,保守度をサイズの比の関数として制御できることを示す.また対照群との多重比較法に関しては,白石(2009)と田中・垂水(1997)はBonferroniの不等式による手法が述べられている.逆正弦変換により,Bonferroniの不等式による手法よりも検出力の高いDunnnett型多重比較検定法を論じることができる.さらにテューキー・ウェルシュの方法とREGW法を改良する閉検定手順も論じる.
著者
D.R. Cox 竹内 啓
出版者
応用統計学会
雑誌
応用統計学 (ISSN:02850370)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.77-91, 1981-12-20 (Released:2009-06-12)
参考文献数
13

この文は1981年5月25日に行われたD.R.Cox教授の講演を,レジュメにもとついて翻訳し,かつ註と若干の補論をつけ加えたものである.標本Yが母数Θに依存する分布を持つとき,Θの推測において,もし分布がΘに依存しない統計量Cが存在するならば,YのCを与えたときの条件付分布にもとついて推測を行うべきであるというのが,条件付推測conditional inferenceの考え方である.この考え方を最初に強調したのはR.A.Fisherであるが,これについて補助統計量ancillary statisticと呼ばれるCをどのようにえらぶべきか,もしそのような統計量が存在しないときはどうすべきかなど多くの問題がある.ここではいろいろな問題点を概観するとともに,最近の研究の成果,とくに漸近理論の結果にもふれている.

3 0 0 0 OA 父,田口玄一

著者
田口 伸
出版者
応用統計学会
雑誌
応用統計学 (ISSN:02850370)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.189-195, 2013 (Released:2014-12-16)
著者
竹内 啓 広津 千尋
出版者
応用統計学会
雑誌
応用統計学 (ISSN:02850370)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.39-50, 1980-01-20 (Released:2009-06-12)
参考文献数
12

2重に分類された計数データに関する検定問題で,行,列またはその両方に順序がある場合を考える.二つの多項分布の比較,いくつかの2項分布の比較,いくつかの多項分布の比較,分割表における独立性の検定,等で傾向のある対立仮説を想定する場合がこれに含まれる.本論文ではこれらの問題に適用できる累積カイ2乗法を提案し,その漸近的な検出力が点数法あるいはタイのある場合のWilcoxonの条件付検定法よりも秀れていることを示す.ここでの累積カイ2乗法は,田口の累積法を修正したもので,Wilcoxon統計量と同じ次元を持っている.
著者
杉浦 成昭
出版者
応用統計学会
雑誌
応用統計学 (ISSN:02850370)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.39-52, 1981-08-31 (Released:2009-06-12)
参考文献数
13
被引用文献数
2 2

昭和55年度共通1次試験総合得点の分布は,杉浦[8]によりJohnson systemのSB分布がよく適合することが示された.昭和54,56年度について同様に調べるとSB分布ではなく,負のWeibull分布を負の方にトランケートした分布が良く適合することがわかった.昭和56年度についてはBeta分布も同じ位よく適合するので分布の両すその階級をそれぞれ2分し自由度を2増して調べるとトランケートWei-bull分布よりもBeta分布がよく適合することがわかった.
著者
椿 広計
出版者
応用統計学会
雑誌
応用統計学 (ISSN:02850370)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1-2, pp.17-30, 2015 (Released:2016-01-22)
参考文献数
12

本フォーラムは,ビジネスのアウトプットを 幾つかの入力変数で説明する入出力システムモデル,すなわち支配法則を 形成する際に必要な基本的視点を議論する.このために, 日本の財務多変量データ解析を事例として用いる.先ず, 労働生産性のような単純な比例関係に誤差が含まれる形で ビジネスの静的法則が記述されることを紹介する. 次に,その法則は適切な分類を通じて正当化されることに注意する. 更に,動的法則の記述のためには,入出力の適切な差分に対して構造を 計量するのが簡便な接近であることを示す.一方, これらの法則当てはめの残差分布は,見かけ上裾の重い分布に従う.しかし, それから外れたデータ群が原入力変数群で説明可能な場合があり, それによってハイパフォーマンスやローパフォーマンスのフロンティアを 形成するデータ群に対する要因解析がランクロジットモデルを 通じて可能となることを示す.最後に,単一方程式モデルを 連立方程式モデルに拡張することで, 利益など財務パフォーマンスに関わる指標の向上に資する ビジネスモデリングが可能となることを示す.
著者
竹澤 邦夫
出版者
応用統計学会
雑誌
応用統計学 (ISSN:02850370)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.81-86, 2011 (Released:2012-03-26)
参考文献数
4
被引用文献数
1 1

誤差が互いに独立で同一の正規分布に従っているときのAIC (Akaike's Information Criterion, 赤池の情報量基準) においては,誤差分散として最尤推定量を用いる.しかし,不偏推定量を用いることもできる.そのときの AIC を AIC' と呼ぶとする.また,誤差分散を可変にすると,最尤推定量とも不偏推定量とも異なる誤差分散が得られる.
著者
椿 広計
出版者
応用統計学会
雑誌
応用統計学 (ISSN:02850370)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2-3, pp.89-98, 2018 (Released:2019-02-13)
参考文献数
29

日本の統計的品質管理活動は,虚偽のデータを企業から無くすことを目的の一つとして掲げてきた.しかし,2017年以降生じた品質データ改ざんは,データ駆動型社会に向かうわが国にとって大きな課題を突き付けた.本フォーラムでは,日本がデータ駆動型社会に向かう際に,必要な品と質と人財に関するマネジメントの在り方について議論する.特に,どのようなデータサイエンティストを育成すべきか,またデータがもたらす経済価値とは何か,そのデータが改ざんされた場合の社会損失はどのようなものかについて議論したい.
著者
川野 秀一 村田 右富実
出版者
応用統計学会
雑誌
応用統計学 (ISSN:02850370)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.45-57, 2019 (Released:2020-04-21)
参考文献数
36

万葉歌の研究において,歌の音の使用傾向から歌人の特徴を捉える場合がある.それぞれの歌人の使用している音の癖を読み取ろうとするものである.しかし,これまでは歌内で多く使用されている,もしくはほとんど使用されていない単一の音のみに着目した単変量的な解析や主観的な判断がほとんどであった.本論文では,複数の音を考慮に入れた統計解析を実行し,歌人の分類ならびにその音に基づいた特徴付けについて考察する.具体的には,まず,柿本人麻呂,山上憶良,大伴旅人の3歌人の短歌に着目し,各短歌内で使用されている音節から特徴量を作成する.その後,得られたデータに対してスパース正準判別分析を適用することにより,歌人の分類と各歌人に特徴的な音節の選択を行う.
著者
白石 高章
出版者
応用統計学会
雑誌
応用統計学 (ISSN:02850370)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1-3, pp.1-22, 2014 (Released:2015-05-16)
参考文献数
20
被引用文献数
1 3

多群比率モデルにおいて,片側の順序制約がある場合での母比率の間の相違に関しての多重比較検定について論じる.分散が同一で平均に片側の順序制約がある場合に,多群正規モデルでの平均相違に関するシングルステップの多重比較法がHayter (1990)とLee and Spurrier (1995)によって提案されている.彼らの手法と類似の比率の相違に関するシングルステップの多重比較法を,逆正弦変換により提案することができる.さらに,このシングルステップの多重比較法を超える閉検定手順を論述する.順序制約のない場合の比率モデルの多重比較検定法は,白石 (2011a)によって論述されているが,本論文で提案する多重比較法は,順序制約がある場合には,白石(2011a)の手法よりも一様に良い.
著者
三輪 哲久
出版者
応用統計学会
雑誌
応用統計学 (ISSN:02850370)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.45-48, 2021 (Released:2021-08-03)
参考文献数
10
著者
原 純輔 安田 三郎
出版者
応用統計学会
雑誌
応用統計学 (ISSN:02850370)
巻号頁・発行日
vol.2, no.3, pp.119-136, 1973-10-20 (Released:2009-12-02)
参考文献数
58

社会学の学問的性格と,社会学的データの諸特徴のゆえに,一方において社会学における統計的方法の応用には自ら限界があるとともに,他方において社会学独自の諸方法も開発されるようになった.社会学データの源泉が主として社会調査に限定されるため,非実験データからの因果推論法としてパス・アナリシスが発達した.計量困難という特徴からは,一方で社会測定の諸方法が案出されるとともに,他方で属性の多変量解析法が考案された.データが個人と社会の2水準にまたがる点,からは,エコロジカル相関や構造効果の問題が出てくる.それらの諸展開のうち,本稿の後半ではパス・アナリシスをやや詳しく紹介する.それは重回帰分析の一種とみなしうる統計解析の一手法であるが,標準化された変数による連立方程式の逐次的システムを考えることにより,諸要因間の因果関係の強さを解明することができる.序数型データやパネル調査データへの適用も紹介する.3,4節は原が,残りを安田が執筆し,全体の調整は共同して行なった.
著者
吉井 めぐみ 清水 邦夫 古津 年章
出版者
応用統計学会
雑誌
応用統計学 (ISSN:02850370)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.75-87, 2002-07-31
参考文献数
16

熱帯降雨観測衛星(TRMM)では,緯度約±37゜の範囲内において,緯経度5゜×5゜領域内の1ヵ月平均降雨強度が最終的なプロダクトとして求められる.TRMM搭載降雨レーダなどの降水レーダで直接に測定される量はZ因子(単位体積あたりの後方散乱断面積に比例する量で,一般に使われるレーダ周波数では雨滴粒径分布の6次モーメントに等しくなる)である.一方,気候や防災などの分野で重要な量は降雨循環であり,何らかの方法でZから降雨強度を推定する必要がある.降雨強度を算出するさいに,いくつかの仮定の下で,レーダ反射因子Z(mm<SUP>6</SUP>/m<SUP>3</SUP>) と降雨強度R (mm/h) との間にべき乗関係(Z-R関係) Z=AR<SUP>B</SUP> (A>0) の成り立つことが知られている.ここで,A と Bは定数である.<BR>本稿はZ-R関係のパラメータ推定を問題とした.気象レーダ観測で得られるレーダ反射因子Zと雨量計によって地上で計測される降雨強度Rとの関係を与えるパラメータの値を知ることは,TRMMにおいてよりよい降雨マップを得るための研究として重要である.Z-R関係の決定のために,これまで,回帰もしくは逆回帰法,分布関数マッチング法,モーメント分布関数比マッチング法,ローレンツ曲線を利用する方法が知られている.本稿では,logZ と logRについて正規線形構造モデルを仮定し,識別可能な場合としてlogRの分散を既知とした場合を採用した.TRMMが目標とする熱帯から中緯度にかけての降雨のうち,熱帯降雨に関しては対数正規分布の降雨強度分布への適合の良さが観察されていることと,降雨の種類や観測領域等によって適切に層別を行えば,対数正規分布の型パラメータはほぼ一定値をとる傾向があるという経験的事実が知られていることによる.ランダムな欠測が起こるかも知れない状況を想定したデータ構造の下に,モデルパラメータの最尤推定を論じた.
著者
光森 達博
出版者
応用統計学会
雑誌
応用統計学 (ISSN:02850370)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.41-51, 1998-06-24 (Released:2009-06-12)
参考文献数
11

インターネットは,個人でも容易に利用できる環境が整ってきたが,応用統計に関わるものにとってインターネットはどのように活用できるだろうか.情報を受ける立場と情報を発信する立場に分けて,インターネットを応用統計に活用する場合の課題と問題点を考察した.情報を受ける立場からは,どのような考え方で情報収集活動を行うべきかについて議論し,そのためにはどのような方法があるかをわれわれの事例に基づいて紹介した.情報を発信する立場からは,何をどのようにして発信していくかという問題を,公開されているWebページを紹介しながら議論した.最近では,例数設計や簡単な統計解析ができるWebページもいくつか出てきており,応用統計に特有のインターネットの活用方法も考えられるようになってきた.そのひとつとして,Java Scriptを用いて簡単な統計計算を含むWebページを作成する方法を紹介し,応用統計への活用について議論した.
著者
佐藤 俊哉
出版者
応用統計学会
雑誌
応用統計学 (ISSN:02850370)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.21-34, 1994-09-30 (Released:2009-06-12)
参考文献数
24
被引用文献数
9 9

Intent-to-treat解析に関してはさまざまな議論がある.多くの生物統計家がランダム化臨床試験では必須の解析であるとしているものの,ランダムに割り付けられた治療の効果が正しく評価可能であった対象だけを解析すべき,または両者を併用すべき,などの方針も容認されている.これは,intent-to-treat解析は治療が臨床に導入された後に起こり得る状況をも考慮した実践的な解析で,プロトコルを遵守した治療効果評価可能例のみの解析は生物学的な効果を調べるための研究的な解析である,という認識にもとづいている.本論文では,intent-to-treat解析による治療効果の検定と治療効果の推定について因果推論の立場から議論し,治療効果の検定に関してはintent-to-treat解析は正しく因果帰無仮説の検定を行っていること,一般に「実践的」と考えられているのはintent-to-treat解析による治療効果の推定であることを明らかにする.さらに,プロトコルを遵守した治療効果評価可能例のみの解析でも因果パラメータを正しく推定できないことを示し,ランダム化にもとづいたintent-to-treat解析で因果パラメータを推定する方法を提案する.この方法は因果パラメータに強い生物学的な仮定を必要とするが,ランダム化にもとづいたノンパラメトリックな治療効果の推定を実施できるという利点を持っている.