著者
山本 里見 僧理 栄司
出版者
秋田工業高等専門学校
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1994

セルローズファイバーの壁への適正挿入法の検討(通気層確保の必要性)について検討した.同一寸法の実験棟2棟(床面積2坪)をセルローズファイバーで断熱施工し,一方に壁内通気層を設け,他方に通気層を設けない構造とした.室内は7時から22時まで室温22℃,相対湿度80%とした.その結果次の点が明らかになった.1)壁面内の断熱材の温度特性は,両棟でほとんど違いが見られず,断熱特性については通気層の影響は少ないことがわかった.2)通気層の影響は湿度特性に表れ,通気層がないと壁体内の絶対湿度は,屋外側と室内側で絶対湿度に大きな差が生じ,屋外側では結露に結びつく可能性のある状態になりうることがわかった.それに対して通気層を設けると,壁体内の湿度は適正に外部に放出され,断熱材の室内側も屋外側もほぼ同じ状態となることが分かった.3)断熱材の水分含水率を測定すると通気層がないほうが約2割ほど高くなった.4)通気層は小屋裏の温湿度特性の改善にも効果的であることがわかった.また,セルローズファイバーの透湿特性を調査するための室内実験を実施した.断熱材によって仕切られた実験箱の一方に乾燥空気を,他方に水蒸気圧一定の湿潤空気を流すことによって,境界壁に置かれた断熱材料の透湿係数を測定した.断熱材料には,グラスウ-ル(GW)とセルローズファイバー(CF)を用いて比較した.検討の結果,CFの透過水蒸気量は水蒸気圧差に比例し,得られた透湿係数は1.7〜1.9となり木繊維板などの値に近い.一方,GWではCFと異なる挙動が見られた.壁内での断熱材両側の水蒸気圧差を推定し,そこでの透過水蒸気量を比較するとCFがGWより大きいのと判断できた.また,CWは実験前後で材料自体に重量変化はなかったのに対し,CFは3%〜6%の重量増加が見られ,CFの吸湿性の確認ができた.