著者
北野 裕 甲斐 清徳 山村 直敏 吉柴 聡史 黒羽 正範
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.154, no.6, pp.352-361, 2019 (Released:2019-12-01)
参考文献数
44
被引用文献数
8 9

ミロガバリンベシル酸塩(以下ミロガバリン,販売名:タリージェ®錠)は第一三共株式会社が創製した電位依存性カルシウムチャネルα2δサブユニットに対する新規のリガンドであり,末梢性神経障害性疼痛を適応症として2019年1月に承認された.ミロガバリンはα2δ-1およびα2δ-2サブユニットに対して強力かつ選択的な結合親和性を示し,特に,神経障害性疼痛において重要な役割を担うα2δ-1サブユニットに対して持続的に結合した.ラットの神経障害性疼痛モデルにおいて,ミロガバリンは強力かつ持続的な鎮痛作用を示した.リガンド結合能を欠失させたα2δサブユニット変異マウスを用いた検討において,ミロガバリンの鎮痛作用はα2δ-1変異マウスでは消失し,α2δ-2変異マウスでは野生型マウスと同様に認められたことから,その鎮痛作用はα2δ-1サブユニットを介して発現していると考えられた.ミロガバリンは経口吸収性が高く,血漿曝露量は用量に比例する.大部分が未変化体として尿中に排泄されることから,薬物相互作用が生じる可能性は低いが,腎機能障害患者ではクレアチニンクリアランス値に基づき用量調節が規定されている.ミロガバリンは末梢性神経障害性疼痛を対象とした検証試験として,糖尿病性末梢神経障害性疼痛を対象としたプラセボ対照試験および長期投与試験,帯状疱疹後神経痛を対象としたプラセボ対照試験および長期投与試験を国際共同試験として実施し,いずれにおいても有意な疼痛改善効果が示された.また,最大用量の30 mg/日まで忍容性が良好であった.ミロガバリンは有効性と安全性のバランスがとれており,末梢性神経障害性疼痛領域へ新たな治療の選択肢を提供することで,日本の患者さんや医療関係者の皆様に貢献できるものと期待している.