著者
藤本 淳 山林 一 一之沢 昭夫 外村 舜治
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.571-576, 1964-08-15

はじめに 肺の生理機能は酸素を摂取し炭酸ガスを排出する事で,肺疾患の治療もこの機能を果たさせる事に多大の関心が払われている。ガス交換に関与するのは肺胞であるが,肺胞に出入するガスが通る気道が正常であつてこそ肺胞機能が完全に維持されるのであり更に気道は肺胞機能を行うのを完全にさせる機構をもつているといえる。即ち健康人は極寒の環境で寒冷空気を吸入しても障害なく,上気道に認められる各種の細菌も下気道に至れば存在しない事等合目的的に作動している事が認められている。要するに気道系は単にガスの通路となつているのみならず,塵埃や微生物を濾過浄化すると共に,吸入空気の温度湿度調節を行なつているのである。然し気道系に炎症等の病変を生来すると呼吸器系症状を訴え,肺機能障害を惹起するに至る。この気道系の疾病に対し内服療法が行われているが,気道系が外界に通じている事を利用し,外界より治療せんとする事が試みられた。又酸素吸入等の乾燥ガスを吸入させる時には,温度湿度の調節を行う必要がある。この為に開発されたのがエロゾル療法とよばれるものである。エロゾルとは0.5〜3μの水溶液の小粒子の浮遊状態にあるものである。本論文ではエロゾル療法の臨床の実際について記述する。