著者
山根 みどり
出版者
日本鳥類標識協会
雑誌
日本鳥類標識協会誌 (ISSN:09144307)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.23-34, 2015 (Released:2016-04-20)
参考文献数
22

兵庫県宝塚市内のゴルフ場敷地内で,2012年9月24日,エゾセンニュウLocustella fasciolata amnicolaが1羽標識放鳥された.兵庫県内の観察記録は数件あるが,標識記録は本個体が初めてである.捕獲場所は林縁部の草藪で,狭い範囲で3羽の地鳴きが同時に聞かれたため,秋は小群で渡ることが推測できた.形態を他の類似種と比較した結果,種名をエゾセンニュウ,亜種名amnicolaと同定し,性不明,第1回冬羽と判断した. また,未知の部分が多い本種の渡り生態について,山階鳥類研究所より提供された過去30年間のエゾセンニュウの放鳥データと,過去の文献を分析して推測を試みた.本種は,北海道で繁殖し繁殖期に多数標識放鳥されているものの,春と秋の渡りのデータは少ない.別の文献による,灯台に衝突死した個体数の記録と照らし合わせながら場所と個体数を地図に落として,本種の春と秋の渡りについて,それぞれの開始と終了の時期,そのルート,渡り中継地における滞在日数の推測を行った. 標識調査の結果と過去の知見を組み合わせて,さまざまな角度から分析することにより,鳥の渡り生態の解明に貢献できる可能性があると考えられた.