著者
桐 昭弘 山根 俊和 伊藤 紀男
出版者
富山大学
雑誌
富山大学工学部紀要 (ISSN:03871339)
巻号頁・発行日
vol.48, pp.77-87, 1997-02

The purpose of this study is to clarify how to determine more convenient or compact bank angle of the 10 cylinder V-type engine. Generally the total number of combinations of cylinder arrangement has a large number with the increase of cylinder. Therefore we usually requires tedious calculations to obtain the analytical result. But the amount of calculation are decreased by selecting reasonably cylinder arrangement of straight 5 cylinders constituting V-type 10 cylinder engine. In this report, we analyze the exciting moment by the latter method. As a result, there is not how to reduce perfectly an unbalance moment of the engine, but we make it clear that the practical engine with some new bank angles is found out. And their results agree with them by the former method.1989年に米国のデトロイトで開かれたモーターショーに,米国ビック3の一つであるクライスラー社が,OHVで8,000cc,400psの90°V形10気筒という途方もなく巨大なエンジンを搭載した"ダッジ・バイパー"というプロトタイプカーを持ち込んだ。これは2人乗りで典型的なアメリカン・スタイルのノスタルジックなロードスターであった。しかし,その車が実際に生産に移されるとは,そのときは誰も考えていなかったと言われている。ところが,その3年後には現実のものとなり,その後は好評を得ながら現在に至っている。一般に,乗用車用のV形多気筒機関としては6気筒や8気筒が主流で,それ以上のものとしてはヨーロッパなどで12気筒のものが搭載されている。このことから,本来,V形10気筒機関は,総排気量と1気筒当たりの排気量とのバランスの関係で,実用には不向きだと言われていた。今回新たに実用化されたV形10気筒機関に関しては,すでに筆者の一人は,その機関に発生する起振モーメントの動力学的な解析を行ってきた。このような多気筒機関の解析においては,気筒数が増えると気筒配列の組み合せ数は階乗で増加するため,その配列の選び方によって,起振モーメントの解析が煩雑になったり,比較的容易になったりする。すでに報告した論文では,V形10気筒機関の気筒配列の組み合せ数を,最大限1,600通り考え,それらすべての組み合せについて計算を試みた。そして,その中で起振モーメントが削減できないものを除外して,実用的なパンク角を求めてきた。それに対して本研究では,あらかじめ気筒配列の組み合せ数を少なくするために,まず,V形を構成する直列5気筒機関の段階で,有効と考えられる配列を絞り込み,それらをV形に配置した場合の解析法について検討を行った。その結果,すでに報告したものと同じ結果が得られたので,ここにその新しい解析法について報告する。