著者
山添 孝徳
出版者
公益社団法人 自動車技術会
雑誌
自動車技術会論文集 (ISSN:02878321)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.107-112, 2020 (Released:2020-01-24)
参考文献数
14

大都市を中心に広がる大気汚染対策と,気候変動対策として,各国がガソリン車やディーゼル車の販売を禁止する方針を打ち出すなど,電気自動車(EV)が一気に普及していく可能性が高まっているが,EV普及の為の課題の一つとして,充電時間が長いということがある。現状の充電時間は,50kW級の急速充電器を使用して,約30分から1時間程度である。これに対して,ユーザはガソリン給油時間と同等の充電時間 約6分程度を望んでいる為,各充電インフラ会社では350kW級の超急速充電器を開発することを決め,2020年頃から広範囲に設置する予定である。一方,超急速充電を受け入れる方の電池は,充電中に電池温度が上昇し,電池の劣化が加速される懸念がある為,電池の冷却は必須である。 本稿では,超急速充電時に適したEV電池の冷却方式として,相変化材料(PCM)を用いた冷却方式を検討した。その結果、EVに搭載された電池パックを350kWで6分間急速充電した時の,電池パック内セル温度の上昇に対して,セルの通常使用温度の上限60℃以下にする為に,PCMをセル間に配置しセルの熱をPCMに吸収させて温度上昇を軽減させることが有効であることがわかった。100個のセルとセル体積の4%の体積のPCMで構成された電池パックを想定し,セル温度をシミュレーションした結果,環境温度40℃の条件でもセル温度は60℃以下になることを確認した。また,PCMを使用した時の課題であるPCMに溜まった熱の放熱については,急速充電後に走行中の風などで空冷することで,5時間毎に急速充電してもセル温度は60℃以下になることを机上計算で確認した。