- 著者
-
中村 智裕
山田 悌士
- 出版者
- 日本医療機器学会
- 雑誌
- 医科器械学 (ISSN:0385440X)
- 巻号頁・発行日
- vol.73, no.4, 2003-04-01
近年,感染性医療廃棄物の処理問題は病院経営の上で重要視されつつある.特に感染性排液の処理については,その量は年々増える傾向であり,各施設によってその処理方法が問題となっている.今回われわれはその中でも泌尿器科の経尿道的手術時に発生する大量の感染性廃液の処理について着目した.これまでこれら手術時に発生する廃液の処理は感染性廃棄物専用のプラスチックバケツに廃液をため消毒剤入り凝固材によって固形化し焼却あるいは埋め立てなどの処理をしていた.しかし,この方法では,手術途中でのバケツ交換による手術の中断や廃棄するバケツの重量が重すぎ移送が困難,環境破壊などの問題を抱えていた.しかし一度の手術に出る廃液の量も多く廃棄コストの問題もあった.そこでわれわれは手術室改築にともない,この廃液処理に歯科用吸引装置を利用し,手術を中断することなく自動で廃液を吸引し,感染性廃水処理槽で非感染性処理水とした後,一般雑排水として排水するバキュームシステムを考案した.この処理システムは泌尿器科の経尿道的手術時に対応できるようバケツに金属メッシュフィルタやレベルセンサを取り付けた.また,4室同時に手術ができるようセントラル配管方式にした.さらに,使用後も容易に片付けができるように消毒や洗浄がしやすい構造に改良をした.これによりスタッフの労力の軽減や処理費用の削減,手術室の効率的運用などが可能となった.しかし,このシステムは地下に感染性汚水を処理するための処理槽を設けたり,各部屋をつなぐ配管工事が必要であったりとイニシャルコストが非常にかかる欠点がある.そこで現在はこれらの大がかりな設備を必要としない,あるいは既存の手術室にも設置が可能なシステムも考案中である.