著者
山田 欣伯
出版者
社団法人 日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科学会雑誌 (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.46, no.4, pp.511-520, 2002-08-10 (Released:2010-08-10)
参考文献数
32

目的: 失活歯の多くは, 支台築造が行われ全部被覆冠で修復される. しかし, 長期的な経過は常によい結果を示しているわけでなく, しばしば脱落や歯根破折のような臨床的なトラブルにみまわれる. 本研究の目的は, 失活臼歯に対する部分被覆での修復の可能性を明らかにすることである.方法: 一定の基準で選択した140本のヒト抜去小臼歯を用い, 各10試料の14条件とした. 2種類のMOD窩洞を形成し, 種々の方法で修復した. すなわち, 条件1は無形成歯, 条件2~4, 10は窩洞形成のみ, 条件5, 6, 11は光重合型コンポジットレジンによる修復, 条件7, 8, 12は鋳造インレーによる修復, 条件9, 13, 14は, 鋳造アンレーによる修復である. 各試料に対し荷重試験を行い, 破折強度および破折様相を求め, 相互に比較した.結果: すべての条件のなかで, 接着性レジンセメントで合着した鋳造アンレーが最も高い破折強度を示した. ただし, 破折様相は再修復が困難であった. 次に高い強度を示したのは鋳造インレーであった. コンポジットレジン修復は, 有意に低い破折強度を示したが, 破折様相は容易に再修復できるものだった.結論: 鋳造アンレーによる修復の破折強度は, 無形成歯よりも高い値を示し, 失活臼歯を部分被覆タイプの修復物で修復が可能であることが示された. また, コンポジットレジン修復におけるボンディング剤や鋳造修復における接着性レジンセメントの有効性が示された.