著者
山田 雅穂
出版者
一般社団法人 日本社会福祉学会
雑誌
社会福祉学 (ISSN:09110232)
巻号頁・発行日
vol.51, no.4, pp.139-152, 2011

2007年のコムスン事件後,介護サービス提供主体の多様化が今後機能および継続するための具体的な条件については,社会保障政策および福祉政策研究における規制緩和論,規制強化論,準市場の概念のいずれもが提示し得ていない.本稿では,全国の利用者へのサービス承継が問題となったコムスン事件の事例検討を通して,利用者の多様な介護ニーズを充足するサービスの継続的かつ安定的な提供が可能であれば,提供主体は営利・非営利を問わないと論証した.そして提供主体の多様化が機能および継続するための条件は,準市場の示す条件に加え,第1に多様なサービスの継続的かつ安定的な提供という要素をサービスの公共性の性質として加えること,第2に事業者の不正防止の法整備と介護報酬の適正な設定による提供主体の経営基盤の安定および育成である.すなわち公的責任による条件整備により市場機能を活用し,サービスの量と質を確保する政策が求められる.