著者
山脇 三平
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.40, no.11, pp.481-488, 1958-11-25

この報告は, わが国の山岳林のうち急傾斜でない山腹で運材につかわれている3 tonクローラ型トラクタ(Table 2参照)の牽引抵抗・燃料消費率・振動について実際測定してえられた2,3の結果について報告している。1. 伐採点からトラクタ道側まで数十mの林地上を, トラクタ後部に装備された小型1胴ウインチで玉切材や全幹材(樹種カラマツ)を集材するときの, 集材索にはたらいた張力, 負荷時・無負荷時の燃料消費率を測定した。この結果は, Table 3,Fig. 3のとおりである。2. 勾配=3〜16%のトラクター道上を, 運行速度=2.5〜6.0 km/hrで, 運材に従事しているトラクタの燃料消費率はFig. 4のとおりである。3. 走行中のトラクタおよびサルキーの集材索と牽引桿の双方に作用している張力については, Fig. 1に示した筆者の設計した測定方法によつて同時測定をすることができた。こういう丸太牽引の機構は, トラクタおよびサルキーによる運材をほかの運材方法とはちがつたものとして特徴づけているわけで, この測定の結果は, Table 4-a, b, Fig. 5のとおりである。4. これらの結果から, 牽引桿に作用する張力は集材索に作用する張力より絶対値は小さいが, より変動のはげしい繰返し応力がはたらいていることが認められる。この試験はさらに継続される必要があるが, これらの結果はこのサルキーの重心が高いために凸凹のひどい地面上ではバランスをうしないやすいことなどとともに, トラクタまたはサルキーの構造および作業方式について改良をくわえる必要があると, 筆者は考えている。5. このトラクタおよびサルキーでやわらかい土砂道上を運材するとき, あるいは林地の伐根をのりこえたりしたときでも, トラクタの運転台の振動には大きな加速度があらわれなかつた。ただしブルドーザ付のトラクタが単車で, 砂利で舗装したかたい林道上を, 2〜6.2 km/hrの速度で走行するばあいには, トラクタの走行速度がはやくなるほど衝撃回数は少なくなるが加速度の絶対値は大きくなり, 三成分別の衝撃回数はどの路面でも最高速走行のときに, 前後>左右>上下の成分の順の大きさになることが認めらる(Table 5参照)。