著者
野田 稲吉 山西 信夫
出版者
社団法人 日本化学会
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.289-292, 1964

水酸金雲母,1-フッ素,1-水酸金雲母組成調合物を500~800℃,600~1200bar下で水熱処理した。調合物中にアルミナおよびシリカ成分が不足したため,水酸金雲母調合物よりは水酸金雲母のほかに600℃以上ではクドカンラン石,500℃ではブルース石が生成した。水酸金雲母組成調合物では反応後の反応液pHは10~11で,温度が高く,時間の長いほど生成雲母の結晶性がよい。アルカリを加えpH >11となると, 生成雲母の結晶性はやや劣るようであった。1 - フッ素,1-水酸金雲母組成調合物は,金雲母のほかに常にKMgF3の相当多量が析出した。このほか,カリシライト,ハクリュウ石が伴生する。析出金雲母結晶は水酸金雲母よりやや小さい。この調合物にアルカリを過剰に加えると,カリシライト, ハクリュウ石の生成量がまし, フッ素を過剰に加えるとKMgF<SUB>3</SUB> の生成量がまし, 結局金雲母生成量は減ずる。<BR>生成結晶の格子定数を測定した結果,水酸金雲母,フッ素金雲母の値は既知の値とよく一致し,c<SUB>0</SUB>について,この両雲母間にVegard の法則が成立つものとして, c<SUB>0</SUB> の値より含有フッ素量を求め,1-フッ素,1-水酸金雲母調合物の生成物はほぼ55%のフッ素を含有,カリ過剰調合物の生成物は30%含有,フッ素過剰調合物の生成物は60%含有と推定した。