著者
野村 修一 鷲尾 一浩 山野 寿久 松本 英男 永広 格 東 良平 佐々木 澄治
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.41-44, 1994

症例122歳, 妊娠31週, 当院入院の前日夕方より腹痛があった. 腹痛は腹部全体におよび間歇性であったが, 入院翌日には右側に限局する傾向がみられ, 翌々日手術となった. 虫垂穿孔と右側腹腔への膿汁貯留が認められた. 妊娠40週で正常女児を自然分娩にて出産した. 症例225歳, 妊娠33週, 前日より心窩部痛があったが, 腹部全体の痛みとなり入院した. 腹痛はしだいに右側にかた寄るようになったため同日手術となった. 虫垂は穿孔はしていないものの著明に発赤腫大し, 周囲に膿汁貯留を認めた. 妊娠38週で帝王切開にて正常男児を出産した.<br>妊娠優期においては, 子宮の増大と虫垂の変位により症状所見が非定型的で不明瞭であり, 診断が難しい場合がある. 虫垂炎に腹膜炎が加わると胎児死亡や早産の危険があり, 手術をためらってはならない.