著者
安藤 祐子 山﨑 陽子 新美 知子 細田 明利 川島 正人 嶋田 昌彦
出版者
日本口腔顔面痛学会
雑誌
日本口腔顔面痛学会雑誌 (ISSN:1883308X)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.49-53, 2015-12-25 (Released:2016-05-27)
参考文献数
11

症例の概要:症例は50歳の女性.16か月前より右側舌根部に違和感を自覚するようになった.近医内科受診したところ,含嗽薬が処方されたが症状は改善しなかった.その後,近医内科で膠原病が疑われ血液検査を行ったが異常はなかった.症状は次第に右側舌縁部全体に拡大した.2か月前,近医歯科受診を経て本院口腔外科受診となった.細菌検査の結果はカンジダ陰性であった.軟膏および含嗽薬が処方されたが症状に変化がなかったため当科受診となった.初診時は右側舌縁部に灼熱感を訴え,症状は断続的に発生していた.胃部不快感があり内科受診予定とのことだったので立効散7.5g/日を含嗽で処方したところ,含嗽後一時的に症状は軽減した.処方開始7週間後,症状の発生頻度が減少した.処方開始11週間後,症状を感じない時間が増えた.この頃より,患者は自主的に症状のある時のみ立効散を使用していた.その後,症状は7週間で2回のみの出現であったため,処方開始5か月後,立効散の含嗽の頓用処方とした.処方開始8か月後には症状が落ち着いたため,症状出現時に立効散を含嗽で使用することとし,終診となった.考察:本症例は含嗽薬による含嗽では症状の改善はなかったが,立効散による含嗽で症状が改善した.したがって,立効散の含有成分による舌粘膜への作用が示唆された.結論:内服治療が困難な舌痛症に対し,立効散の含嗽は有用であったと考えられた.