著者
岡山 健夫 平山 喜彦 西崎 仁博
出版者
日本植物病理学会
雑誌
日本植物病理学会報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.73, no.3, pp.155-161, 2007 (Released:2007-09-06)
参考文献数
19
被引用文献数
3 3

イチゴ炭疽病のベノミル耐性菌を対象に選択培地を考案し,潜在感染部位および生存部位を調査した.PSA培地を用い,炭疽病菌の生育を比較的阻害せず他の糸状菌の生育を抑制する薬剤としてベノミル50 ppm,トリフルミゾール30 ppmを選択し,細菌の生育抑制のためにオキシガル100 ppmとストレプトマイシン硫酸塩50 ppmを添加して選択培地を作製した.この選択培地は選択性が高く,潜在感染株や枯死株の小葉,葉柄,葉柄基部,根冠部からは高率に炭疽病菌が分離され,鉢土からも分離できた.潜在感染株では,外側葉位の小葉や葉柄,葉柄基部から炭疽病菌が高率に分離され,内側の葉位になるほど検出率が低下したが,最も新しい内部の小葉からも分離された.炭疽病菌の灌注接種株には汚斑症状は見られず,小葉が褪色して萎凋した.105~106胞子/mlの灌注接種株は,全株が萎凋または枯死し,102胞子/ml以下の接種株も低率ながら萎凋症状を呈した.灌注接種株の根から炭疽病菌が高率に分離され,葉柄,小葉の順に検出率が低下し,根または地際部からの侵入感染が示唆された.炭疽病菌は,分生子懸濁液を灌注したピートモス・バーミキュライトやオガクズ,砂などの培養土から1ヶ月以上経過後も検出された.以上のことから,本菌はイチゴの葉,葉柄,葉柄基部,根冠部に潜在感染し,イチゴが植えられていない育苗用土で長期間生存することが明らかになった.