著者
堤 親範 阿部 俊也 岡山 卓史 空閑 啓高 下川 雄三 植田 圭二郎 西原 一善 中野 徹
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.82, no.6, pp.1063-1069, 2021 (Released:2021-12-30)
参考文献数
27
被引用文献数
1

自己免疫性膵炎(AIP)は限局性病変を形成し,膵癌と鑑別困難な症例が存在する.本検討は当院で経験したAIP 34例を対象とし,その臨床学的因子,手術症例の周術期因子を解析した.AIPの5例(14.7%)で膵癌を疑い,手術を施行した.AIPにおいて,多変量解析でCA19-9高値(>37U/mL)(P=0.01),膵外病変なし(P=0.01),EUS-FNA未施行(P<0.01)が手術施行に関わる独立した因子であった.また,単変量解析で 血管浸潤所見(P=0.03)を認めるAIPで有意に手術が施行され,限局性膵腫大(P=0.06)を認めるAIPで手術が施行される傾向にあった.AIPと膵癌の特徴を同時に認める症例ではそれらの鑑別が困難になりやすく,AIPに対する手術を回避するためにはAIPに特徴的な所見を含め,EUS-FNA/FNBの重要性を再認識する必要があると考えられた.