著者
岡崎 啓介
出版者
日本大腸肛門病学会
雑誌
日本大腸肛門病学会雑誌 (ISSN:00471801)
巻号頁・発行日
vol.63, no.6, pp.339-345, 2010 (Released:2010-05-31)
参考文献数
14
被引用文献数
2 2

放射線不透過マーカーを用いて大腸通過時間を測定し,便秘の質的診断を試みた.健常成人ボランティア43名を対象とし,1,2,3日目に放射線不透過マーカー(Sitzmarks)を服用,4,7日目に腹部単純写真を撮影,Metcalfらの方法で全大腸通過時間,大腸各区域(右側,左側,S状結腸直腸)通過時間を測定した.質問アンケートと排便状況(回数,ブリストルスケール)について自記させた.通過時間は中央値で示した.男性(n=13)はすべて便秘(-)で,全大腸通過時間は7.2h,右側2.4h,左側3.6h,S状結腸直腸2.4h.女性で便秘(-)(n=24)は全大腸31.8h,右側4.2h,左側9.0h,S状結腸直腸11.4h.女性で便秘(+)(n=6)は全大腸110.4h,右側30.6h,左側36.6h,S状結腸直腸30.0hであった.大腸通過時間が40h超の延長例を類型化すると,左側通過時間を最長とするcolonic inertia型とS状結腸直腸通過時間を最長とするoutlet obstruction型に分類できた.この分類は排便回数やブリストルスケールでは判別できず,放射線不透過マーカーによる質的診断の有効性が示唆された.