著者
横山 晋 岡本 毅彦 石井 忠雄 武谷 愿
出版者
社団法人 日本化学会
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.72, no.1, pp.353-358, 1969
被引用文献数
1

トド松,ブナ,ナラ樹皮の各MWリグニンおよび赤松チオリグニン等の原リグニンにはDMSO-<I>d</I><SUB>6</SUB>を,また原リグニンのアセチル化誘導体にはクロロホルム-<I>d</I>を,それぞれNMR溶媒に用いて,高分解能NMRスペクトルを測定した。次いでアセチル化誘導体のNMRスペクトルから求めたフェノール性,アルコール性水酸基含量の測定結果を併用して,原リグニンのNMRスペクトルから各種結合形態の水素の含量を測定した。<BR>その結果MWリグニンとチオリグニンとの間の各種水素の分布には特徴的な差異が見られた。すなわちMWリグニンはチオリグニンと比べてアルコール性水酸基水素および芳香族環側鎖の脂肪族水素H<SUB>α</SUB>,H<SUB>β</SUB>(側鎖脂肪族α,β,γ位炭素に酸素が結合する)の含量が多い。これに対してチオリグニンはフェノール性水酸基水素および芳香族環側鎖の脂肪族水素H<SUB>α'</SUB>,H<SUB>β'</SUB>(側鎖脂肪族α,β,γ位炭素に酸素が結合していない)の含量が多い。<BR>高分解能NMRスペクトル分析によって求めた各種結合形態水素の含量および元素分析値を用いて,リグニンの基本構造単位に関する構造指数を求める新たな構造解析法を導入した。