著者
岡本 芳美
出版者
水利科学研究所
雑誌
水利科学 (ISSN:00394858)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.73-96, 2013

昭和22年(1947年)9月15日,関東地方はカスリーン(Kathleen)台風の襲来により,各地に大雨が降った。特に,利根川上流域に有史以来最大級の大雨をもたらした。カスリーン台風はどのような台風であったのであろうか。なお,カスリーン台風は,カスリン,またはキャサリン台風ともよばれる。図-I参照。(次の""内の文は,畠山久尚と高橋浩一郎の記述を後述の「カスリン颱風の研究」から引用している。以後,""で囲まれた文は,引用文である。)"9月3日3時頃マリアナ東方1,000kmの海上に1,010mb(1mb=1hPS)位の弱い(熱帯)低気圧が発生して西北西に移動し,10日マリアナ北部を通過,11日3時頃マリアナ西方500kmの海上に達し,次第に発達して中心示度994mb位となり,台風としての気流系が顕著となった。これがカスリーン台風である(註:現在では何年の台風第何号という台風の呼び方がなされているが,当時の米進駐軍気象隊では赤道以北,経度180度以西で発生した台風に女性の名前をアルファベットのaから順々につけることにしていて,連合軍による占領下の当時の日本はこの規則に従っていた)。
著者
岡本 芳美
出版者
水利科学研究所
雑誌
水利科学 (ISSN:00394858)
巻号頁・発行日
vol.55, no.6, pp.78-98, 2012

マルチ・タンク・モデルの開発で計算が容易に出来るようになったことが本文開始において示されている。ここでは,それ等を具体的に説明する。流量を計算しようとする流域に関して,流域に降った雨と流域の出口の流量の両者が分かっている場合,この流域を水文データの有る流域と一般に呼ぶ。雨量は分かっているが流量が無い流域を水文データの無い流域と表現する。両方共分かっていない場合,水文データの全然無い流域と言うような呼び方をする。今,一般に,広く行われている流出計算法では,その方法が有する各係数の値は水文データの有る流域における流出の再現計算から試算で求められるようになっている。すなわち,基本的に,水文データの有る流域でなければ適用出来ない方法である,と言えよう。これに対して,マルチ・タンク・モデルによる計算は,全ての係数が理論的に決められるようになっているから,適用流域が水文データの有る流域であるかどうか問題にする必要は,あまり無い。すなわち,水文データの無い流域に,容易に適用出来る方法である。