- 著者
-
岡村 武彦
- 出版者
- 日本精神保健・予防学会
- 雑誌
- 予防精神医学 (ISSN:24334499)
- 巻号頁・発行日
- vol.2, no.1, pp.48-55, 2017 (Released:2020-12-01)
- 参考文献数
- 13
世界初の精神障がい者フットサル国際大会である「第1回ソーシャルフットボール国際大会」が、2016年2月に大阪で開催され、2日間にわたる熱戦の結果、日本代表チームの優勝で幕を閉じた。いずれの試合も、選手のプレーはスポーツマンシップにのっとり、高い技術で躍動感にあふれており、多くの観客が感銘を受け、回復あるいは回復へと向かう姿を選手から感じ取ることができたであろう。
精神科医療の現場におけるスポーツは、症状の改善や体力の回復のみならず、就労・就学など社会参加促進を含めた回復を目指すことを目的とし、リハビリテーションの手段として用いられるようになってきている。スポーツが回復にどの程度役割を果たしているかはまだ明らかではないが、不安・うつなどの症状や認知機能の改善、QOL・自尊感情の向上、自己管理能力(服薬管理など)の向上、再発・再燃の防止、チーム医療のレベルアップ、就労、スティグマの軽減などが期待されている。
精神障がい者スポーツ活動の歴史は浅く、科学的・客観的効果の学術的検討をさらにしていかねばならず、また専門の知識を持った医療スタッフの育成も必要であるなど課題も多くある。ただ、スポーツは仲間が集まる場を提供し、回復を体験している人たちとの交流を実現し、仲間、家族、支援者との関係性の中での希望を見いだし、回復の物語性を紡ぐことを可能にするのではないかと思われる。