著者
岡田 英男
出版者
奈良大学文学部文化財学科
雑誌
文化財学報
巻号頁・発行日
no.9, pp.1-16, 1991-03

建築遺跡や集落の発掘調査の成果をより一層具体的に表現するために、建造物の復原的考察が行われ、併せて実物大に再現されたり、模型が製作される場合が少なくない。昭和23〜25年度に発掘調査が行われた登呂遺跡では住居と高床倉庫が復原されている。この復原に当たり、倉庫では登呂遺跡で発見された建築部材と、静岡県山木遺跡から発見された多量の高床式建物の部材が併せて検討された。住居については江戸時代天明4年(一七八四)完成の製鉄技術書『鉄山秘書』に記された製鉄小屋「たたら」の記録が重要な根披となったことは広く知られている。高床式建物では三重県ら納所遺跡、福岡県湯納遺跡、愛媛県古照遺跡などのように建築部材が発見されたことが少なくない。これらの古材が最も重要な復原資料であることは言うまでもない。その他、銅鐸、土器に刻まれた建物の絵、家型土器や家型埴輪、家屋文鏡、太刀の環頭など建築の姿を表現する遺物が少なくない。また『古事記』『日本書紀』『万葉集』『風土記』などに見える建築関係用語の研究も行なわれ、伊勢神宮・出雲大社・住吉大社のような伝統的な神社建築の構造形式も原史時代の建築を考えるうえに重要な資料となっている。