著者
本多 裕司 岡野 麻里 齋藤 泰宏
出版者
一般社団法人 日本応用糖質科学会
雑誌
応用糖質科学:日本応用糖質科学会誌 (ISSN:21856427)
巻号頁・発行日
vol.12, no.3, pp.170-175, 2022-08-20 (Released:2022-09-20)
参考文献数
13

本研究では,焼きいもの肉質が粉質系に近い「五郎島金時」と粘質系の「べにはるか」の生イモと蒸したサツマイモに含まれる遊離糖組成,澱粉の物理化学的な性質,及びβ-アミラーゼ活性を分析した.両試料共に生イモに含まれる遊離糖含量はスクロースが最も多かったが,蒸しイモに含まれる遊離糖含量はマルトースが最も多かった.収穫直後の「べにはるか」澱粉の糊化開始温度 (To) は「五郎島金時」澱粉よりも5 °C以上低い値を示した.一方,定温貯蔵後の試料については,両試料共にToは63 °C付近であった.収穫直後も定温貯蔵後も「べにはるか」澱粉の各RVAパラメーターは「五郎島金時」澱粉よりも低くなる傾向がみられた.両試料のβ-アミラーゼ比活性は60 °Cが最高値であったが,40~70 °Cにおける収穫直後の両試料のβ-アミラーゼ比活性に有意差はみられなかった.一方,定温貯蔵後の試料の場合,50 °Cと60 °Cの「べにはるか」のβ-アミラーゼ比活性は「五郎島金時」の3倍以上であった.以上の分析値を用いて主成分分析した結果,「べにはるか」の食味の発現にβ-アミラーゼ活性が,「五郎島金時」の食味の発現には,澱粉の物理化学的な性質が大きく寄与している可能性が示唆された.