著者
宮澤 光太郎 松浦 裕一 池田 圭吾 岩丸 祥史
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.75, no.5, pp.e83-e90, 2022 (Released:2022-05-13)
参考文献数
10

2018年,わが国で26年ぶりに飼養豚と野生イノシシにおける豚熱の発生が確認された.現在,野生イノシシを介した豚熱の拡散を防ぐため,経口生ワクチンが野外に散布されている.豚熱検査に使用されるコンベンショナルまたはリアルタイムRT-PCR法は,豚熱ウイルス国内流行株と経口生ワクチン株を識別できないため,ワクチン散布地域の陽性検体は,サンガー法によりRT-PCR産物の塩基配列を決定し,ウイルス株を識別している.本研究では,近年普及し始めた小型で安価なナノポアシーケンサーを用いて国内流行株と経口生ワクチン株の塩基配列を決定し,ウイルス株の識別を試みた.その結果,豚熱ウイルス遺伝子が検出された野生イノシシ29検体のうち28検体でウイルス株を識別でき,解析終了まで4~5時間を要するサンガー法と比較して,識別までの時間を2時間以上短縮できることが示された.