著者
蟹沢 直樹 岩井 俊哉
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NLP, 非線形問題 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.108, no.442, pp.89-94, 2009-02-21
被引用文献数
1

ダイナミカルノイズを付加した自己想起型カオスニューラルネットワークの想起の動的性質を数値的に調べ、次の結果を得た。パラメータ空間が記憶パターンを非周期的に想起して巡る遷移状態とホップフィールドモデルのような静的な想起の状態に分かれる。ノイズのない場合にその境界で見られる記憶パターンの想起頻度の乱れが、ノイズを付加することにより消える。この現象のノイズ強度依存性を調べたところ、適度のノイズで乱れが最も小さくなる確率共鳴的な性質が見られた。また、記憶パターンを想起したときの位相空間での点の集合の広がりは静的な想起のスケーリングパラメータの値の増大にともない減少することがわかった。これは、そのパラメータが大きくなるとホップフィールド的な静的な想起の状態へ近づくため、位相空間上での軌道の乱れが減少するためと推測できる。また、この効果はノイズ強度が大きいほど強いことがわかった。