著者
岩井 冨美子
出版者
島根県立大学短期大学部
雑誌
島根女子短期大学紀要 (ISSN:02889226)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.54-61, 1968-03-01

V・ウルフの処女作「船出」には,彼女の心を示めるさまざまのテーマが散在している。死テーマは,その中でも最も明確な彼女の主題の一つである。これは,作品「船出」において,ウルフの死に関係があると考えられる重要な語句,文章をselectし,これらを大きく14の項目に分類したものである。ウルフの死を論ずるための材料の一部を得ようというのがこの研究の目的である。筆者の最初の意図は,もっと深層部における死テーマをさがしあてて分類するつもりであったが,作品を読んでいくうちに,このように,つたない分類に終ってしまった。これは,筆者の作品鑑賞力の乏しさに加えて,伝統的な形式によって書かれ,未だ本格的にその主題が滲透していないと考えられるこの作品自体にもその一因があるのではなかろうか。ともかく,かかる分類の最初の試みとして,きわめて不充分なものである。テキストは,Hogarth Press 1957年版を使用した。末尾の()内の数字は,上記テキストの頁数を表わす。代名詞のうち,特に必要と思われるものには,指示する対象物を代名詞の直後に指摘した。また,殆どのものを,筆者の独断により,一項目に属せしめたが,止むなく二項目にわたるものには,その旨明記した。テキスト中の引用詩の中には,ウルフの死テーマにきわめて関係深いと思われるものがあるが,これらについては分類を行なわなかった。