著者
岩佐 亮二 本間 忠 高野 史郎
出版者
千葉大学
雑誌
千葉大学園芸学部学術報告 (ISSN:00693227)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.103-113, 1962-12-31

1 従来から栽培されているマツバボタンPortulaca grandifloraは1年草であり,8月中下旬以降草勢が衰え,10月に枯死する.この種の花弁では,数や色彩に巾広い変異が見られる.2 近年導入されたジュエル種P. parana (?)は単弁バラ色であり,11月迄咲きつづけ,東京附近では冬期の簡単な保護によって越冬し,永年生となる.3 著者等は,ジュエルにつき,秋口の花壇用としての価値を高く評価しているが,この評価を延長して,品種的な分化の穫得を企図し,数年来,種間交雑・コルヒチン処理・レントゲン線照射・栄養接近等を行って来た.4 圃場における種間交雑では,正逆何れの場合も,柱頭並びに花柱内で,異種花粉に対する抑制作用が強く発現し,ためにF_1種子を得ていない.5 この阻害作用をうけて,花粉の多くは異種柱頭上で不発芽に終り,一部発芽したものも,その花粉管は柱頭内に侵入出来ずにトグロ状に彎曲し,極くわずかの花粉が正常に近い花粉管を出すものの,その伸長も遅々として進まない,ことを観察した。6 花粉の人工発芽試験では,培地の組成に若干の工夫を加えたにも拘らず,満足出来る状態に達していない.但し,庶糖20%,寒天1.5%の区が多少優っていた.7 上記培地の表面下1mmの深さに自種雌蕋を埋没すると,その直上で,花粉の発芽状態は可成りの改善を示した.8 雌蕋に含まれる或る種の化学物質を想定すれば,このものは,他種花粉に対しては阻害的に,自種花粉に就ては促進的に働くものと推測される.また,それは寒天中で拡散する.9 栄養雑種・栄養接近については,台と穂の組合せを代えても,プラスの結果が現われなかった.