著者
岩倉 いずみ
出版者
一般社団法人 日本女性科学者の会
雑誌
日本女性科学者の会学術誌 (ISSN:13494449)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.15-22, 2016 (Released:2016-03-29)
参考文献数
34

化学反応遷移状態を計測したいと思ったことはありませんか?人間の目で直接観測できない高速な現象を、高速ストロボを用いて可視化するように、化学反応に伴う結合生成過程や結合開裂過程を計測することは、化学者の夢でした。分子振動周期よりも十分に短い可視5-fsパルス光の出現により、分子振動変化を振動の実時間で計測することが可能になった。その結果、光反応に伴う分子構造変化を分子振動の瞬時瞬時の周波数変化として直接計測できるようになった。しかし、より一般的な熱反応遷移状態の光計測は課題として残されていた。本研究では、可視5-fsパルス光による誘導ラマン過程を利用することで、フェムト秒の時間領域で電子基底状態において液相分子の熱反応を瞬時に開始する手法(コヒーレント分子振動励起反応)を開発した。さらに、光反応のみならず、熱反応に伴う分子構造変化をも光計測したので報告する。