著者
堀 純子
出版者
一般社団法人 日本女性科学者の会
雑誌
日本女性科学者の会学術誌 (ISSN:13494449)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.13-18, 2007 (Released:2011-10-13)
参考文献数
20
被引用文献数
1 1

眼は、脳や生殖器官と同様に、臓器機能を温存するために炎症が自動制御される性質すわなち免疫特権(immune privilege)が備わっている特殊な臓器である。角膜移植モデルを用いて、眼の免疫特権の分子機構を解析し、臨床における治療に応用することが可能である。角膜組織の同所性または異所性移植モデルを用いて、角膜を構成する各細胞層が各々異なる免疫特性を有することを示した。免疫原性は角膜上皮細胞と実質細胞に由来するが、免疫特権は角膜内皮細胞に由来する。角膜内皮細胞に恒常発現するCD95LとB7-H1が角膜内に浸潤する炎症細胞にアポトーシスを誘導して眼局所における免疫抑制を担っている。臨床への応用として、ドナー角膜上皮を宿主由来上皮に置換して移植することにより、拒絶のハイリスク宿主においても抗原感作と拒絶を回避でき、移植片の長期生着を得ることが可能である。
著者
武 洲
出版者
一般社団法人 日本女性科学者の会
雑誌
日本女性科学者の会学術誌 (ISSN:13494449)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.36-41, 2022 (Released:2022-01-10)
参考文献数
19

高齢人口の急増に伴い、世界の認知症人数は20年以内に1億6千万を超えると推測されており、認知症の7割を占めるアルツハイマー型認知症(Alzheimer’s disease, AD)の9割は加齢に伴い発症している。AD脳の病態にはアミロイドβ(Aβ)蓄積と凝集による老人班形成、Tau蛋白質過剰リン酸化による神経原線維変性およびミクログリア活性化による脳内炎症がある。一方、リウマチ関節炎などでみられる全身炎症は脳内炎症を誘発し、AD発症とその進行を促す。歯周病病原菌P.gingivalisの成分がAD剖検脳に検出されることから、歯周病がAD増悪因子として注目されている。私たちは独自に構築した解析手法を用いて、長年歯周病のAD誘発と病態への関与解明に取り込んでいる。本稿ではADにおける全身炎症の関わりを概説するともに、これまで明らかにした歯周病のADへの関与メカニズムを解説する。
著者
桐谷 佳惠 上田 太規 織田 万波 越山 豪 山崎 一矢 赤瀬 達三
出版者
一般社団法人 日本女性科学者の会
雑誌
日本女性科学者の会学術誌 (ISSN:13494449)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.59-66, 2008 (Released:2011-10-06)
参考文献数
7

本研究は、首都高速道路案内標識デザイン提案の一環で行われたフルスケールでのフォント視認性測定実験である。使用フォントは新ゴMとVialogLT Mで、「永環」、「Cerija」、「B08」の文字列を対象にした。和文の文字高は、500、450、400、350、300mm、アルファベットと英数は400、350、300、250、200mmの5段階に変化させた。距離は、「おそらくこうであろう」と思ったところ(視認性判断)と、「確実に文字が読めた」ところ(認知度判断)の2カ所を測定した。結果として、視認性判断の距離は認知度判断の距離より、どの条件でも有意に大きくなったが、約半数の実験参加者が、視認性判断では間違った文字列を報告した。また、和文500mmと450mmでは、どちらの判断距離も有意な差が出なかった。アルファベットは和文より視認距離が大きく、和文の約70%の文字高で和文と同程度の視認・認知距離を得られることがわかった。さらに、視認性測定の意味など、方法論上の問題も議論された。
著者
飯間 麻美
出版者
一般社団法人 日本女性科学者の会
雑誌
日本女性科学者の会学術誌 (ISSN:13494449)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.16-21, 2023 (Released:2023-01-30)
参考文献数
18

現在のがん治療は細分化が進んでおり,より適切な治療決定に繋がる様な新たな画像診断法の開発が重要であると考えられる。拡散MRIは生体内の水分子のブラウン運動による拡散現象を観察可能であり,拡散MRIから得られる定量値ががんの診断や再発,予後予測に役立つような,新たな診断法を開発している。また拡散MRI定量値の標準化も重要な課題である。本稿では拡散MRIに関する,IVIMや非ガウス拡散MRIを始めとする最先端のがんイメージング研究開発や標準化に向けた取り組みを紹介する。
著者
取井 猛流 木下 菜月 浦野 諒人 三好 大輔 川内 敬子
出版者
一般社団法人 日本女性科学者の会
雑誌
日本女性科学者の会学術誌 (ISSN:13494449)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.25-35, 2022 (Released:2022-01-10)
参考文献数
68

分子生物学の研究が飛躍的に進歩し、分子標的薬の開発や治癒が困難であった様々な疾患に対する治療法が確立されてきた。一方で、標的タンパク質を同定できたとしてもタンパク質の構造上の特徴などから、標的とすることが難しいケースも依然として多い。そこで注目されているのが核酸を狙った分子標的薬である。特に、核酸の代表的非標準構造であるグアニン四重らせん構造(G-quadruplex: G4)を標的とした薬剤の探索が進められ、新たながん治療法への応用が期待されている。本総説では、G4が標的分子として注目されている理由、そして光増感能を持つG4リガンドのがん光線力学療法への応用について我々の研究を中心に紹介する。
著者
岩倉 いずみ
出版者
一般社団法人 日本女性科学者の会
雑誌
日本女性科学者の会学術誌 (ISSN:13494449)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.15-22, 2016 (Released:2016-03-29)
参考文献数
34

化学反応遷移状態を計測したいと思ったことはありませんか?人間の目で直接観測できない高速な現象を、高速ストロボを用いて可視化するように、化学反応に伴う結合生成過程や結合開裂過程を計測することは、化学者の夢でした。分子振動周期よりも十分に短い可視5-fsパルス光の出現により、分子振動変化を振動の実時間で計測することが可能になった。その結果、光反応に伴う分子構造変化を分子振動の瞬時瞬時の周波数変化として直接計測できるようになった。しかし、より一般的な熱反応遷移状態の光計測は課題として残されていた。本研究では、可視5-fsパルス光による誘導ラマン過程を利用することで、フェムト秒の時間領域で電子基底状態において液相分子の熱反応を瞬時に開始する手法(コヒーレント分子振動励起反応)を開発した。さらに、光反応のみならず、熱反応に伴う分子構造変化をも光計測したので報告する。
著者
坂田(柳元) 麻実子
出版者
一般社団法人 日本女性科学者の会
雑誌
日本女性科学者の会学術誌 (ISSN:13494449)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.1-12, 2021-03-12 (Released:2021-03-12)
参考文献数
50
被引用文献数
1

T細胞リンパ腫の一つである血管免疫芽球性T細胞リンパ腫 (angioimmunoblasitc T-cell lymphoma: AITL)を研究テーマに、ゲノム異常、病態解析、トランスレーショナルリサーチに取り組んできた。本論文では、AITLに関する著者の研究と関連分野の研究について、総説する。
著者
佐藤 美由紀
出版者
一般社団法人 日本女性科学者の会
雑誌
日本女性科学者の会学術誌 (ISSN:13494449)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.9-13, 2013 (Released:2013-05-27)
参考文献数
14

卵子は受精によってすべての細胞に分化しうる胚へと変化する。モデル生物である線虫fertilizationを用いた解析から、この時期には発生と連動して分泌・エンドサイトーシス・オートファジーといった細胞内輸送系が制御され、細胞内外成分の再編成が起きることが明らかとなってきた。また受精卵において、オートファジーは精子から持ち込まれた父性ミトコンドリアとそのゲノムの分解を担うことを見出した。多くの動植物においてミトコンドリアゲノム(mtゲノム)が母系からのみ子孫に受け継がれる母性遺伝という現象が知られているが、そのメカニズムはよくわかっていなかった。われわれの結果から、オートファジーによる父性ミトコンドリア分解がmtゲノムの母性遺伝を成立させるために必須なメカニズムであることが明らかとなった。
著者
馬越 芳子 秦 珠子 木原(山本) 眞実 永易 健一 田中 稔久 馬越 淳
出版者
一般社団法人 日本女性科学者の会
雑誌
日本女性科学者の会学術誌 (ISSN:13494449)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.29-43, 2010 (Released:2011-09-21)
参考文献数
14
被引用文献数
1 2

生物が作る生体高分子は、多量の化石燃料を必要とせずに、太陽エネルギー、水、酸素、炭酸ガスや金属イオンを酵素の低いエネルギーの作用で作られる。地球温暖化を防ぐために、カイコが繊維を作る方法を学び、低エネルギーでの高分子合成と繊維形成を構築することが必要である。カイコは紡糸口から、数十種の紡糸方法が精密に制御された超ハイテク技術でスーパー繊維を作っている。乾式・複合・液晶・倦縮・多孔質・高速・ゲル-ゾル転移・イオン制御・自力・自動制御・傾斜紡糸、ゾーン延伸、二酸化炭素固定、低エネルギー紡糸などの幾つもの紡糸方法が巧みに組みあわさり、フィブロイン分子を精密に自動制御配向させながらシルクを作っている。これは合成繊維が数種の方法で、高いエネルギーを用いるのに反し、生物は非常に合理的な、巧妙な方法で、タンパク質をうまく制御しながらエネルギーの消費の少ない方法で糸を作っている。生物の紡糸工場の低エネルギー技術を工業的に取り入れた新たな超合成繊維を作る基礎資料となる。さらに、カイコが糸を形成する際、TCAサイクルを用い、大気中の二酸化炭素を糸の中のアミノ酸、グリシン、アラニン、セリン、アスパラギン酸に取り込むことを、世界で初めて明らかにした。
著者
大和田 操 北川 照男
出版者
一般社団法人 日本女性科学者の会
雑誌
日本女性科学者の会学術誌 (ISSN:13494449)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.22-31, 2012 (Released:2012-07-03)
参考文献数
28

以前は、小児に見られる糖尿病は急激に発症する1型糖尿病(インスリン依存型糖尿病、IDDM)であると考えられてきたが、日本では1970年代、小中学生、即ち学童の尿糖検査による糖尿病集団検診が行われるようになり、成人期の疾患と考えられていた2型糖尿病(インスリン非依存型糖尿病、NIDDM)が少なくないことが明らかにされた。1型糖尿病の発生頻度が著しく低いわが国では、一般のみでなく、医療従事者の知識が乏しく、小児1型糖尿病の長期予後は、欧米に比べて極めて悪かったが、1980年代に入ると、小児糖尿病の国際研究が開始され、現在では、その予後が改善されてきた。一方、わが国からの報告以後、欧米においても小児2型糖尿病について関心が持たれるようになった。本稿では、これまでの40年間における、我が国の小児糖尿病臨床研究について概説したい。
著者
篠原 美都
出版者
一般社団法人 日本女性科学者の会
雑誌
日本女性科学者の会学術誌 (ISSN:13494449)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.1-10, 2019-03-01 (Released:2019-03-01)
参考文献数
18

精子幹細胞はほぼ個体の一生にわたって毎日莫大な数の精子を産生する。その基盤が幹細胞特有な現象である自己複製分裂である。精子幹細胞にウイルス遺伝子導入により固有の標識を施し精子形成への寄与の動態を調べたところ、その寿命は極めて長いことがわかった。一方精子幹細胞には休眠期がなく全てが分裂していた。これらは精子幹細胞が活発かつ長期の自己複製活性を持つことを示す。精子幹細胞を試験管内で長期に増幅する培養法(Germline Stem; GS細胞)により幹細胞を大量に調製することが可能となり、生化学的解析や遺伝子改変により精子幹細胞の自己複製制御機構などバイオロジーの解明に役立った。またGS細胞は子孫を作成できるため、新しい生殖工学発展の可能性を秘めている。今後この技術が幅広く非齧歯類にも展開し、不妊治療や疾患モデル動物の作成などに繋がることが期待される。
著者
吉田 絵里
出版者
一般社団法人 日本女性科学者の会
雑誌
日本女性科学者の会学術誌 (ISSN:13494449)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.1-12, 2007

分子内に溶媒不溶部を持たず分子的に完全に溶解している&ldquo;非両親媒性高分子&rdquo;に対して自己組織化を起こさせる新規なミセル形成法について紹介する。1,4-ジオキサン中では非両親媒性高分子であるポリ(4ビニルフェノール)-<i>block</i>-ポリスチレンジブロック共重合体は、単独では自己組織化を示さないが、&alpha;,&omega;-ジアミンの存在下では球状ミセルを形成する。このミセルは良好な感熱応答挙動を示し、温度により解離再形成が可逆的に制御される。また、臨界ミセル濃度は共重合体濃度ではなく、自己組織化の誘発物質であるジアミン濃度により決定される。このミセル形成を利用すればさまざまな分子設計が可能である。例えば、両親媒性高分子からは合成が難しいクルーカットミセルやランダムブロック共重合体ミセルを容易に得ることができる。これらの特徴を染料のナノ粒子化に応用した例についても述べる。
著者
栗原 晴子
出版者
一般社団法人 日本女性科学者の会
雑誌
日本女性科学者の会学術誌 (ISSN:13494449)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.41-50, 2020

<p>現在人為活動に伴う大気二酸化炭素濃度の増加に伴って海では、温暖化による海水温の上昇と共に、海水のpHが低下する海洋酸性化が急速に進行している。海水のpHが低下すると、海水中の炭酸カルシウム飽和度が低下することから、特にサンゴ礁生態系は酸性化の影響を強く受けることが懸念されている。本総論では、海洋酸性化がサンゴ礁域の生物ならびに生態系に及ぼす影響について要点をまとめ、今後の研究の方向性について論じる。特に研究の発展と共に明らかにされてきたサンゴの石灰化機構への影響、さらにはサンゴ種間や種内での応答の違いについて紹介する。またサンゴに加えて、ウニ類や藻類などへの影響と共に、生物間相互作用に対する影響を述べ、酸性化によるサンゴ礁生態系への影響と今後の課題について論じる。</p>
著者
功刀 由紀子
出版者
一般社団法人 日本女性科学者の会
雑誌
日本女性科学者の会学術誌 (ISSN:13494449)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.41-46, 2016 (Released:2016-03-29)
参考文献数
3

日本女性科学者の会では、内閣府男女共同参画局との協働により、女子生徒の理系進学促進に関わる啓発事業を推進している。その活動の中で、女子生徒が理系で興味を持つ分野には、明らかな偏りが存在することに注目した。多くの女子生徒が興味を示す分野は、生物、生命系であり、工学系分野への興味は低い。この偏りは、結果として女性研究者の活躍する分野の偏りへ反映されることになる。この偏りの発生要因について、男女の生得的性差を挙げる言説もあるが、一方でロールモデルとなる女性研究者の前例が少なく、結果として女子生徒への情報提供や魅力の紹介が貧弱となっていることが挙げられる。より効果的な理工系への進学促進を啓発するためには、幅広い進学分野選択を促進する方法論の開発が必要であろう。一方、このような性差に基づく偏りについて、ジェンダーイノベーションの提唱が注目される。
著者
大隅 正子
出版者
一般社団法人 日本女性科学者の会
雑誌
日本女性科学者の会学術誌 (ISSN:13494449)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.17-40, 2009 (Released:2011-09-29)
参考文献数
78
被引用文献数
1 2

酵母細胞の機能と結び付けてその微細構造を正しく視るために、著者を中心として開発してきた固定法の変遷を紹介し、「無コーティング超高分解能低加速電圧走査顕微鏡法」、「加圧凍結・極低温低加速電圧走査電子顕微鏡法」の開発と、それにより解明された、酵母細胞の微細構造について概説した。それらの研究成果を基にして、分裂酵母の細胞壁再生のモデル系を構築し、細胞壁の形成機構について細胞表層と細胞内小器官の挙動から解析し、これに関与するアクチン細胞骨格の役割について理解を深めた。さらに、集束イオンビームによるマイクロサンプリング法を応用して、細胞壁の分子構造を可視化する手法の開発における最新の成果を記述し、合わせて、酵母細胞内のF-アクチンのやじり構造の可視化をミオシンS1修飾により成功させ、細胞分裂におけるアクチンの役割について究明した。最後に、酵母研究の今後の展望を論じた。
著者
大谷 直子
出版者
一般社団法人 日本女性科学者の会
雑誌
日本女性科学者の会学術誌 (ISSN:13494449)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.9-19, 2015-03-27 (Released:2015-03-31)
参考文献数
22

細胞には異常を感知し、その細胞自身や生体の正常を保とうとする様々な生体防御機構が備わっている。細胞老化もそのような生体防御機構のひとつで、発がんの危険性のある損傷が細胞に加わった際に誘導される不可逆的細胞増殖停止であり、生来細胞に備わった重要な発癌防御機構である。しかし、自ら死滅するアポトーシスとは異なり、細胞老化を起こすと、生体内において長期間生き続ける可能性がある。最近、生き残った老化細胞から、様々な炎症性サイトカインや細胞外マトリクス分解酵素といった多くのタンパクが産生・分泌されることが明らかになり、この現象はSASP(senescence-associated secretory phenotype)と呼ばれている。今回我々は、肥満にともなう肝臓がんモデルにおいて、肝臓の間質に存在する肝星細胞が細胞老化とSASPを起こし、肝がんに促進的ながん微小環境を形成することを見出した。さらに肝星細胞の細胞老化は肥満により増加した腸内細菌が産生する2次胆汁酸のひとつ、デオキシコール酸により促進されることを示した。
著者
玉井 幸恵 清水 智美 永井 文乃 熊谷 晶子
出版者
一般社団法人 日本女性科学者の会
雑誌
日本女性科学者の会学術誌 (ISSN:13494449)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.33-38, 2015-03-27 (Released:2015-03-31)
参考文献数
10

唾液は、血液に比し、非浸襲、安全に採取でき、特にストレス研究において注目されている。唾液ストレスマーカーとして、α-アミラーゼ活性やクロモグラニンAが知られているが、これらの研究は急性期ストレスに限られ、長期的ストレス状態緩和での研究はほとんどなされていない。今回、海岸ウォーキングストレス緩和法について検討した。唾液アミラーゼ活性、血圧測定、ストレス心理テストをウォーキング前後で実施した。約40名の唾液サンプルのうち、アミラーゼの活性がウォーキング後に低下していた3サンプルについて、解析を試みた。唾液アミラーゼ分子について抗体を用いウェスタンブロッティング、ドットブロット分析を行った。これらの結果から、アミラーゼ活性の減少は、唾液腺からの分泌低下というより、別の因子による可能性が示唆された。現在、これらバイオマーカーに関してプロテオーム解析を継続中である。