著者
田中 耕史 井上 耕一 豊島 優子 岡 崇史 田中 宣暁 外海 洋平 野里 陽一 岩倉 克臣 藤井 謙司
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.46, no.SUPPL.3, pp.S3_48-S3_53, 2014 (Released:2015-10-26)
参考文献数
1

症例は51歳男性. 頻拍の加療のため近医より紹介となった. 洞調律時, V1誘導はrsR’ パターンで+/-のデルタ波を伴っていた. 発作時心電図は230bpmのregular wide QRS tachycardiaであった.  心臓電気生理学的検査では頻拍中の心房最早期興奮部位は冠静脈洞入口部近傍であり, His不応期での心室期外刺激で頻拍はリセットされた. 房室結節を順行性に, 後中隔副伝導路を逆行性に伝導する正方向性房室回帰性頻拍と診断した.  冠静脈入口部近傍で頻拍中に高周波通電を行ったところ頻拍は速やかに停止した. その後, 逆伝導は房室結節を介するもののみとなり, デルタ波も消失した. 一方, 右脚ブロックが顕在化し, QRS幅は術前140msから術後160msに拡大した. 術前は, 右側後中隔副伝導路を介して右室が早期に興奮していたため元来の右脚ブロックがマスクされ, QRS幅も相対的に狭くなっていたと考えられた.