著者
谷井 康子 飯村 富子 堀 みゆき 平賀 睦 徳川 麻衣子 安楽 和子 岩切 桂子
出版者
日本赤十字広島看護大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

研究目的は、日米の独居する女性後期高齢者がどのように自律した生きかたをしているか、それらの支えとなっている要因を明らかにし、日米での相違の比較により、日本の高齢者の看護支援のための示唆を得ることであった。成果:日米の独居する女性後期高齢者のサクセスフル・エイジング(高齢者が老いの変化に上手く適応し、生きる意味や独自の生き方を見出していくこと)について、1.日米とも高齢者は自律した独居生活の継続を強く希望し、そのために独自のライフスタイルを自由に選択し維持していた。2.独居生活に重要なのは健康と考え、健康管理のために規則的な生活や定期的検診・受診を積極的に行っていたが、米国では、予防的行動が多く、日本では受診回数が多く、受診行動が頻回であった。3.活動面では、日本は公民館など地域の活動に参加しており、米国では教会を中心にボランティア活動への参加が活発で、また多くが車の運転をしており、行動範囲も広かった。4.福祉サービスの利用は、日本では多くのものが体力に合わせ利用していたが、米国では親族や友人など相互支援が積極的に行われており、福祉サービスの利用は少なかった。5.過去の出来事からの影響について、日本では被爆、敗戦体験があり、これらは壊滅状態から自らの力で乗り越えたという自信や誇りとなり、人生の苦難に立ち向かう原動力となっていた。米国ではキリスト教文化を基盤としたボランティア精神や自らの手で開拓したチャレンジ精神が活動の原動力となっていた。6.老いや死について、日米とも自然なこと、人生の一部と捉えていた。米国ではキリスト教的信仰により、来世への希望が霊的な安寧をもたらしていた。日本では仏壇や墓参りに見られるように先祖との繋がりが強く「お迎え」への期待があった。今後、日本の高齢者の予防的行動に重点をおいた指導的支援、個人の人生体験や価値観を尊重した支援のあり方の検討が必要である。