著者
岩山 和史 小野 圭昭 小正 裕
出版者
大阪歯科学会
雑誌
歯科医学 (ISSN:00306150)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1, pp.81-90, 2007
参考文献数
42
被引用文献数
2

本研究は,高さの異なる2種類の咬合干渉装置を付与し,対光反応を計測することにより,それぞれの咬合干渉が自律神経機能に及ぼす影響を明らかにし,その作用機序について検討した.<br>&nbsp;&nbsp;被験者は,全身および顎口腔機能に自覚的,他覚的な異常の認められない成人被験者5名とした.自律神経機能の計測には,赤外線電子瞳孔計を用いた.付与する咬合干渉の高さは,2mmならびに100μmの2種類とした.実験は,下顎安静時と,咬合干渉装置を装着して最大咬みしめを行わせたときの2条件にて行った.分析は交感神経機能の指標である初期瞳孔径,ならびに副交感神経の指標である最大縮瞳速度をパラメータとして行った.その結果,以下の結論を得た.<br>&nbsp;&nbsp;1.2mmの咬合干渉付与時,初期瞳孔径ならびに最大縮瞳速度は,すべての被験者において咬合干渉の有無による有意な差が認められ,咬合干渉付与時に散瞳傾向ならびに最大縮瞳速度の減少傾向が認められた.<br>&nbsp;&nbsp;2.100μmの咬合干渉付与時,初期瞳孔径ならびに最大縮瞳速度は,1名の被験者においてのみ咬合干渉の有無による有意な差が認められ,その傾向は2mm干渉付与時と同様であった.他の4名の被験者においては有意な差は認められなかった.<br>&nbsp;&nbsp;以上のことから,2mmの咬合干渉付与時には,すべての被験者において交感神経の興奮ならびに副交感神経の抑制が生じ,一方,100μmの咬合干渉付与時には,その反応性に個人差が存在した.これは,歯根膜感覚が自律神経機能に影響を及ぼすことは少なく,顎関節内の感覚受容器が刺激され,自律神経機能に変化が生じたと考えられる.