著者
岩山 隆憲 曾我部 浩 橋川 和信
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.1316-1321, 2015-09-15

はじめに 切開式重瞼術の術後は左右差のないこと,瘢痕が目立たないこと,閉瞼時の不自然な陥凹を生じないこと,重瞼線が消失しないことが重要であると筆者らは考えています。 切開法による重瞼作成は重瞼作成予定線より尾側の瞼板前組織の除去により,瞼板と皮膚裏面を癒着させ重瞼を作成する腱板固定法1〜3)が最も簡便であり手術時間も短いとされていますが,術後,閉瞼時に重瞼線の頭側と尾側で癒着による不自然な陥凹を生じることがあります。 瞼板固定法で生じた不自然な陥凹は,時間の経過とともに軽快すると考えている術者もいますが,実際は陥凹の修正目的で来院される患者も多いです。 昨今,眼瞼下垂症手術時の重瞼作成法として挙筋腱膜前転を併用した術式4)が報告されており,自然な重瞼術として知られています。また,一重瞼の患者は潜在的な眼瞼下垂症であることも多く,挙筋腱膜の前転と重瞼術を同時に行うことにより,開瞼をより大きくする美容外科手術5,6)も報告されています。 挙筋腱膜を前転させ,その尾側端と重瞼線の皮膚ないし皮下眼輪筋とを縫着し重瞼を作成する方法であるため,挙筋腱膜と重瞼線への連結を重瞼の正常構造にきわめて近く再建することで重瞼を作成しており1),理にかなった方法です。しかし,これらの術式は挙筋腱膜の前転幅が重瞼溝の皮下まで十分到達する長さの線維性組織を得られることが前提であると筆者らは考えています。 この方法を,下垂が軽度である若年者の厚い瞼に適応させると,挙筋腱膜の前転幅は2〜3mmにもかかわらず,瞼板から皮膚までの厚みがあるため連結に必要な長さを得ることができないことがあります。無理に縫合すると重瞼線の陥凹が強くなり,不自然となります。 筆者らは患者の瞼の厚さに見合った挙筋腱膜から重瞼線への線維性組織の再構築を行うことが,結果として自然な重瞼を得られるのではないかと考えており,挙筋前転と重瞼術を同時に施行する若年患者に対して,前転させた挙筋腱膜の余剰部分をフラップとして挙上し,皮下線維性組織として重瞼線を作成しています。フラップの長さを変えることで皮下組織の厚い瞼に対しても,閉瞼時に陥凹のない自然な重瞼が得られると考えています。本稿では実際の手術についての考え方と手順を紹介します。
著者
黒川 正人 柳沢 曜 川崎 雅人 岩山 隆憲 長谷川 弘毅
出版者
一般社団法人 日本創傷外科学会
雑誌
創傷 (ISSN:1884880X)
巻号頁・発行日
vol.3, no.4, pp.167-173, 2012 (Released:2012-10-01)
参考文献数
9

われわれは巻き爪に対して, 全抜爪を行わず, 爪甲露出部のみの部分抜爪を行ったのちに手術を行っている。 両側の側爪郭に切開を加えて, 爪床骨膜弁は双茎皮弁として挙上する。 このときに, 中枢側に切開を延長して, 弯曲している部分の爪母は切除する。 次に, 骨ヤスリを用いて末節骨遠位部の骨棘を削り, 末節骨背側も平坦化する。 最後に, 側爪郭の皮膚を2~3mm の幅で脱上皮して, その上に双茎爪床骨膜皮弁を両側に開いて縫合する。 本法を9例22趾に対して施行し, 全例において形態は改善し, 症状も軽快した。 全抜爪を行わないために, 術後の爪甲変形は少なく, 爪甲が元の長さまで戻る期間も短かった。 また, 爪床骨膜弁は双茎皮弁として挙上するので, 血行は良好で, 創傷治癒にも有効であった。