著者
竹内 東太郎 笠原 英司 岩崎 光芳
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.8, no.9, pp.597-603, 1999
参考文献数
17

[目的]外傷性硬膜下水腫(SDFC)における手術適応と手術法選択の決定因子を検索するために, CT脳槽造影(C-CT)と硬膜外圧持続測定(EDPM)を行い, それらの結果を検討することである.[対象・方法]1993年1月〜1997年12月までの5年間に当科に入院し, CTにてSDFCと診断された75例全例にSDFC発現後1カ月間経過観察したあとrepeat CTを施行した.repeat CTでSDFCが不変または増大群21例と吸収値変化群10例の計31例(男:女=22:9, 年齢31〜82歳, 平均年齢62.4歳, 両側:片側=20:11)を対象とした.これら31例にC-CTとEDPMを施行し, (1)検査結果, (2)手術適応と手術法の選択, (3)手術成績と予後について検討した.[結果](1)C-CTはno filling(N)11例, delayed filling(D)18例, early filling(E)2例で, NとDが29例(93.5%)と多かった.EDPMは持続高圧型(CH)9例, 間欠高圧型(IH)17例, 持続低圧型(CL)5例で, CHとIHが26例(83.9%)と多かった.(2)repeat CTで吸収値変化群, C-CTのN・D, EDPMのCH・IH, C-CTがE, EDPMがCLで症候性の群29例に手術を施行した.手術法は吸収値変化群10例に洗浄+ドレナージ術, SDFC不変・増大群でC-CTがN, EDPMがCHの6例に洗浄+オマヤ貯留槽設置術, それ以外の13例に硬膜下-腹腔内短絡術(S-Pシャント術)を施行した.再発した4例にはS-Pシャント術を施行した.(3)術後2カ月〜4年4カ月の追跡期間中, 最終的に全例SDFCは消失した.手術を施行しなかった2例は6カ月, 2年4カ月の追跡期間でCT上SDFCの増大や症状の発現は認められなかった.[結語]C-CTとEDPMはSDFCの手術適応, 手術法選択の決定因子として有用であり, 治療指針のフローチャートを作成できた.
著者
竹内 東太郎 笠原 英司 岩崎 光芳 楠見 嘉晃
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル = Japanese journal of neurosurgery (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.6, no.7, pp.471-477, 1997-07-20

症例は59歳男性で,1993年4月より発熱が続き,6月16日に視野障害,意識障害にて来院した.心臓カラードプラー検査で僧帽弁閉鎖不全症,頭部CTで右後頭葉脳内出血を認めた.6月22日に血腫摘出術を施行し,病理所見で血腫周囲の血管に炎症所見を認めた.7月2日にくも膜下出血を発症し,脳血管写で入院時に正常であった左M1-M2移行部に動脈瘤を認め,7月3日に頸部クリッピングを施行し退院した.10月28日に再びくも膜下出血で来院し,脳血管写で前回には正常であった右M1-M3部に狭小化とビーズ様所見を認め,11月11日に再出血により死亡した.全経過中,全身性炎症所見が認められたが,動脈血培養は陰性であった.剖検で右M3部に紡錘形動脈瘤を認めた.病理所見で内膜の炎症・破壊と血管内血液の内膜内への侵入が認められ,細菌性血管炎と細菌性動脈瘤による出血と考えられた.