- 著者
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加藤 元一郎
- 出版者
- 日本脳神経外科コングレス
- 雑誌
- 脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
- 巻号頁・発行日
- vol.18, no.4, pp.277-285, 2009
- 参考文献数
- 18
- 被引用文献数
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認知リハビリテーションは,脳卒中,脳外傷,脳神経外科手術後の亜急性期から慢性期に認められる神経心理学的障害を,認知訓練により改善に導こうとするものである.対象となる障害には,失語・失行・失認,注意障害,記憶障害,視空間障害,遂行機能障害などが含まれる.確固としたエビデンスにはなおも乏しいものの,さまざまなトライアルが行われている.例えば,側頭葉内側部損傷の場合には,著しい記憶障害が生じ,この健忘が訓練の対象になる.そして,記憶訓練により,人の名前を忘れる,場所を忘れ道に迷う,服薬するのを忘れる,何度も同じ質問をするなどという具体的な問題行動が軽減されることが期待される.前頭葉損傷の場合には,日常生活において柔軟性の欠如,計画性のなさ,自発性の欠乏,衝動性の増大などが認められる.認知訓練では,このような障害の背後にある遂行機能障害や情動による行動制御の障害をターゲットとして,これに対して訓練が試みられる.本稿では,右側前頭前野背外側部に損傷を持つケースにおける遂行機能障害に対する,Tinker Toyを用いた訓練とハノイの塔(変法)を用いた認知リハビリテーションの方法とその結果を紹介し,生物学的ないしは神経心理学的な立場から若干め示唆を行った.