著者
川又 達朗 片山 容一
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.18, no.9, pp.666-673, 2009-09-20 (Released:2017-06-02)
参考文献数
23
被引用文献数
1

スポーツ医学の分野では,脳振盪が注目されており,予防を中心にさまざまな研究が行われている.軽症の頭部外傷である脳振盪の予防が強調されるのはなぜであろうか.スポーツによる脳振盪の特徴は,繰り返して起こしやすいこと,軽症であるがゆえに診断,重症度の評価と競技への復帰時期の判断が難しいことである.繰り返す脳振盪は,頭部外傷後脳症や脳振盪後症候群などを引き起こす.尚早な復帰はセカンドインパクト症候群や急性硬膜下血腫など,重篤な頭部外傷の発生につながる可能性がある.脳振盪を起こしやすいスポーツ環境は,急性硬膜下血腫による死亡率が高いことも報告されている.スポーツ頭部外傷,特に脳振盪について現状の考え方をまとめる.
著者
原 寛美
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.21, no.7, pp.516-526, 2012-07-20 (Released:2017-06-02)
被引用文献数
3 6

脳卒中後に生じる可塑性の知見に基づき,脳卒中リハビリテーションは進められる必要性がある.Critical time windowと呼ばれる発症後2〜3週以内に,効果的なリハビリテーションの介入をすることが可塑性を最大限に引き出すことになる.急性期からの運動機能回復のステージ理論が提唱されている.急性期は残存するcorticospinal excitabilityに依拠する回復であり,3ヵ月で終了する.その後3ヵ月をピークに生じているメカニズムは皮質間抑制が解除されるintracortical excitabilityであり6ヵ月まで続く.その後6ヵ月以後も続くのはtraining-induced synaptic strengtheningのメカニズムである.それぞれの時期に効果的なリハビリテーションプログラムを選択する必要性がある.治療的電気刺激,ミラーテラピー,課題志向的訓練などがプログラムの選択肢となる.経頭蓋磁気刺激と集中OT(Neuro-15)は,従来は困難であった慢性期における上肢手指麻痺改善に向けた新たなリハビリテーションの手法である.
著者
吉峰 俊樹 平田 雅之 栁沢 琢史 貴島 晴彦
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.25, no.12, pp.964-972, 2016 (Released:2016-12-25)
参考文献数
21
被引用文献数
1

Brain-machine interface (BMI) とは 「脳と機械の間で信号をやり取りする」 技術であり, 失われた神経機能の代行や補完を目的としている. この10年あまりの間に急速に進歩しつつあり, すでに実用化されたものもある. 大阪大学では 「ヒトが考えただけでコンピュータやロボットを操作できる」 技術を開発中である. BMI技術は神経科学のほか情報科学や多方面の工学領域と統合されて実用化される学際的融合技術であるが, 今後, 人工知能 (AI) 領域の研究の進歩も加わり, ますます広い領域において革新的な展開が期待される新しいニューロテクノロジーである.
著者
河井 信行 畠山 哲宗 田宮 隆
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.185-194, 2016 (Released:2017-03-25)
参考文献数
17
被引用文献数
1

脳外傷後の身体障害が軽い患者では, 外見からは高次脳機能障害が時にわかりにくく, 「見えない障害, 隠れた障害」 などと称される. 外見上は良好に回復しているものの, 社会生活への適応が障害されており, 実際の生活や社会に帰って初めて問題が顕在化し, 結果的に元の学校や職場に戻ることができないこともしばしばある. 本稿では, 脳神経外科医が知っておくべき脳外傷後高次脳機能障害の特徴と診断として, ①急性期の意識障害の正確な記載と早期の画像診断の重要性, ②診断困難例における頭部SPECTやPETなどの機能的画像診断法の有用性, ③自動車運転再開における脳神経外科医の役割について概説する. 脳外傷後高次脳機能障害の病態を正しく理解し診断や治療方針を決めるとともに, 社会参加への適切な判断や指導における脳神経外科医の役割が今後さらに高まると思われる.
著者
佐藤 慎哉 嘉山 孝正
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.22, no.6, pp.443-451, 2013 (Released:2013-06-25)
参考文献数
6
被引用文献数
1 2

低髄液圧症候群は, 脳脊髄液の漏出により頭痛等を引き起こす疾患で, 70年以上も前にその疾患概念が提唱された. その後, その中に低髄液圧でない症例が存在するとの理由で脳脊髄液減少症の名称が提唱されたが, 臨床像に異なる点も多く, 疾病の定義が混乱している. さらに本症と交通外傷の因果関係が社会問題化している. このような状況のもと, 平成19年度から厚生労働科学研究費補助金を受けて「脳脊髄液減少症の診断・治療法の確立に関する研究」が行われ, 平成23年10月に脳脊髄液漏出症を対象にした画像判定および診断基準が公表された. 今回は, なぜ対象が脳脊髄液減少症ではなく脳脊髄液漏出症なのかも含め, 公表した基準について概説する.
著者
伊地 俊介 Chandra S. K. Mayanil 富田 忠則
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.22, no.4, pp.256-268, 2013 (Released:2013-04-25)
参考文献数
84
被引用文献数
1 1

ヒト二分脊椎の原因は, 葉酸代謝関連遺伝子異常や母体の糖代謝関連遺伝子異常をはじめとするgeneticな要因や, 抗てんかん剤内服によるNTDリスク上昇などnon-geneticな要因が複合的に関与 (gene-environmental interaction) し, multifactorialであるといわざるをえない. 1998年から小麦製品への葉酸添加が始まった北米では着実に罹患率が低下し, 栄養強化政策は世界各国に広がりつつあるが, 逆に本邦では徐々に罹患率が上昇している. 葉酸によるNTD予防の機序にはepigeneticな遺伝子発現調節の機構が深く関与し, 神経堤幹細胞の増殖や分化にもかかわっている.
著者
中田 光俊 木下 雅史 中嶋 理帆 篠原 治道
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.26, no.9, pp.657-667, 2017 (Released:2017-09-26)
参考文献数
61
被引用文献数
2 3

右前頭葉はヒトが社会生活を円滑に営むうえで重要な高次脳機能を有し社会脳として機能する. 右前頭葉の機能は運動機能に加え, 作業記憶, 非言語性意味記憶, 視空間認知, 社会的認知, 注意, 遂行機能を有する. 高次脳機能に関する皮質の機能局在は明確になっておらず広い局在が示されている. 白質神経線維として錐体路, 前頭斜走路, 前頭線条体路, 上縦束, 弓状束, 帯状束, 下前頭後頭束, 鉤状束が存在しそれぞれ運動, 運動開始, 運動統御, 視空間認知, メンタライジング, 注意, 非言語性意味記憶, エピソード記憶を担う. 右前頭葉病変に対して覚醒下手術を行う際には, 皮質の機能局在と白質神経線維の走行を熟知し適切なタスクを選択する必要がある.
著者
貴島 晴彦 押野 悟 吉峰 俊樹
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.229-235, 2016 (Released:2016-03-25)
参考文献数
30

非痙攣性てんかん重責 (NCSE) は, 高齢者人口の増加に伴いその発病頻度が増加していると考えられている. NCSEは治療予後が良好でないケースも多く, また致死率も高い. しかし, その症状や脳波所見は多彩であり, また原因となる疾患も神経疾患や代謝性疾患もあり幅広い. 臨床症状と脳波所見が診断の中心となるが, その定義やガイドラインは確立されていない. 本稿では, NCSEの理解を深めるため, その疫学, 原因疾患, 診断, 治療を概説するとともに, 日常診療で遭遇した1例を提示する.
著者
中山 晴雄 荻野 雅宏 平元 侑 岩渕 聡
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.29, no.5, pp.354-360, 2020 (Released:2020-05-25)
参考文献数
20

スポーツ脳損傷において, 近年特に注目を集めているのがスポーツ関連脳振盪 (sports-related concussion : SRC) である. SRCの対応における大きな問題点は, その診断方法が確立されていないことである. このようなSRCに正確に対応するためには, SRCに対する認識や考え方を共有することが肝要である. 本稿では, SRCを中心としたスポーツ脳損傷の対応として, ①シーズン前教育, ②スポーツ脳損傷の認識, ③現場での医学的評価, ④専門的医学的評価, ⑤SRCの管理, ⑥多角的なSRCへの対応, ⑦スポーツ活動への復帰について概説する. 今後, 脳神経外科医におけるSRCに対する評価や対応の標準化が期待される.
著者
泉原 昭文
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.19, no.8, pp.605-615, 2010-08-20

温帯から亜寒帯に属する地域において,クモ膜下出血発症の周期性,群発性あるいは気象との関連性が指摘され,環境因子の影響が示唆される.本検討では亜熱帯に属する八重山諸島における13年間のクモ膜下出血患者94例を対象として,発症時活動状況を含む環境因子からの疫学的分析を行った.本邦の中では発症年齢(平均57.3歳)がやや低く,男女比約1:2で女性の比率がかなり高いが,年間発症率(年齢性別調整17.4)は平均的であった.季節別では秋に多く,月別では8月に多かった.曜日別では月曜に多く,時間別では18:00〜19:59に大きなピークを認め,6:00〜7:59に小さいピークを認めた.また0:00〜1:59と4:00〜5:59に少なかった.台風最接近日前後3日以内ではそれ以外の時に比べて約1.8倍多かった.生活・労働時発症が多かった.無・軽負荷例で周期性および台風接近との関連性がより明瞭であった.
著者
鮎澤 聡 松村 明
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.26, no.12, pp.864-872, 2017 (Released:2017-12-25)
参考文献数
81
被引用文献数
1

ニューロモデュレーション (neuromodulation) とは, ディバイスを用いて電気・磁気刺激や薬物の投与を行い神経活動を調節する治療を指す. 刺激や薬物投与量が調節可能であること, また治療をすみやかに中止することができる, すなわち可逆的であることが, 切除や破壊を中心としてきた従来の機能神経外科との違いとして強調される. 現在, その適用範囲は神経疾患のみならず, 内臓疾患や全身の炎症性疾患にまで広がっている. この分野の発展の背景には医工学分野の進歩があり, 光や超音波など新たな刺激や有効な刺激のためのディバイスが開発されている. 今後, それらの刺激に対する生体反応の統合的な理解が必要とされる. また倫理面の整備が必要である.
著者
三村 將
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.311-317, 2014 (Released:2014-04-25)
参考文献数
23
被引用文献数
1 1

統合失調症とうつ病に関する機能局在について概説した. 統合失調症においては, 前頭葉や側頭葉を中心に, さまざまな脳領域の形態的・機能的異常が指摘されている. これらの一部は幻聴や妄想といった陽性症状と関連する以外に, 社会性を担うとされる「社会脳」と呼ばれる神経ネットワークの異常を生じることが近年明らかになっている. うつ病の病態生理と関連する神経ネットワークの異常についても, 近年のSPECT・PET・NIRS・fMRI等を用いた機能画像研究では主にhypofrontalityが示唆されている. うつ病の薬物療法, 認知行動療法, 脳深部刺激 (DBS) などに関する縦断的画像研究は, 症状の回復や神経ネットワークの修復に関わるメカニズムの理解に大きく貢献している.
著者
西川 泰正 大畑 光彦 鈴木 健二 小川 彰 小笠原 邦昭
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.25, no.9, pp.773-776, 2016 (Released:2016-09-25)
参考文献数
14

神経線維腫症1型 (NF-1) は多発性に神経線維腫や神経鞘腫を合併することがあり, しばしば難治性の神経痛の原因になる. 従来の脊髄刺激療法 (spinal cord stimulation : SCS) は術後に全身MRIが禁忌であるがゆえに, 腫瘍由来の神経痛は適応外とされてきたため有効性は検討されていない. 今回われわれはNF-1に合併した両下肢の疼痛を主訴とする多発性腰椎神経根腫瘍症例に対し全身MRI対応の新型SCSデバイスを用い良好な除痛効果を得た. SCSは脊髄神経根腫瘍に起因した根性痛に対しても有効であり, 新型デバイスの登場はMRIが撮像できないことで埋め込みを躊躇していた症例にとって朗報である.
著者
田中 実 藤堂 具紀
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.25, no.12, pp.973-978, 2016 (Released:2016-12-25)
参考文献数
15

G47Δは第三世代のがん治療用単純ヘルペスウイルスⅠ型で, ウイルスゲノムのγ34.5, ICP6, α47の3つの遺伝子に人為的三重変異を有する. 腫瘍細胞特異的なウイルス複製と殺細胞作用, 特異的抗腫瘍免疫の惹起力がいずれも増強されているため, 脳腫瘍に限らずあらゆる固形がんに対し高い抗腫瘍効果を示す. G47Δの第Ⅰ-Ⅱa相臨床試験は, 2009年より5年間, 再発膠芽腫を対象とし, 定位的脳手術により2週間以内に2回の腫瘍内投与が行われて, 脳腫瘍内投与の安全性が確認された. 効果を示唆する所見も複数例で観察され, 特に長期的効果は特異的抗腫瘍免疫の寄与が大きく, それを惹起して治療効果を期待するにはG47Δ投与後約半年ほどの時間がかかることが示唆された. 2015年より第Ⅱ相試験が医師主導治験として開始された. 標準治療に対するウイルス療法の上乗せ効果を検討するため, 初期治療後残存もしくは再発した, KPSが60%以上の膠芽腫患者を対象とし, テモゾロミドを併用して, 定位的脳手術により4週間間隔で最大6回までG47Δを繰り返し投与する. 2016年にはG47Δが厚生労働省の先駆け審査品目に指定され, 早期医薬品承認が見込まれる. G47Δが実用化されれば膠芽腫の治癒も可能となるため, 近い将来日本において, 悪性グリオーマの標準治療となることが期待される.
著者
西田 憲記 久寿米木 亮 坂本 祐史
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.25, no.9, pp.718-729, 2016 (Released:2016-09-25)
参考文献数
35
被引用文献数
2

多くの骨粗鬆症性圧迫骨折 (以下OCF) は腰痛を主訴に発症し, 椎体高は減じても自然に軽快している. しかし, 偽関節形成や進行性椎体圧潰を引き起こし, 疼痛が遷延しADLの低下や神経障害を呈する症例も少なからず存在する. OCFの保存的治療は急性期治療と慢性期治療に分けられる. 偽関節形成や進行性椎体圧潰などの予防を目的とした急性期治療は安静, NSAIDsやコルセット治療を行う. 受傷後の画像診断で偽関節形成や進行性圧潰を早期に発見することがOCFの急性期治療に重要である. 骨粗鬆症治療薬として, ビスフォスフォネート製剤などを中心とした骨吸収阻害薬とテリパラチド製剤などを中心とした骨形成促進薬があり, それらの薬剤の功罪の理解が重要である. 保存的治療が無効で, 偽関節形成や進行性圧潰により疼痛の遷延や神経症状が出現する場合には手術治療が必要となる. 椎体形成術としてブロック型人工骨や骨セメントなどの充塡や椎体の圧を軽減するための穿孔術などが低侵襲手術として行われている. 最近では2011年に保険収載され, 近年多くの施設で治療可能となったBKP (balloon kyphoplasty) も椎体形成術の有用な手技と思われる. 刻々と変化する可能性のあるOCFに対して, 治療方法の利点と欠点を十分に吟味しながら治療にあたることが必要である.
著者
加藤 元一郎
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.18, no.4, pp.277-285, 2009
参考文献数
18
被引用文献数
1

認知リハビリテーションは,脳卒中,脳外傷,脳神経外科手術後の亜急性期から慢性期に認められる神経心理学的障害を,認知訓練により改善に導こうとするものである.対象となる障害には,失語・失行・失認,注意障害,記憶障害,視空間障害,遂行機能障害などが含まれる.確固としたエビデンスにはなおも乏しいものの,さまざまなトライアルが行われている.例えば,側頭葉内側部損傷の場合には,著しい記憶障害が生じ,この健忘が訓練の対象になる.そして,記憶訓練により,人の名前を忘れる,場所を忘れ道に迷う,服薬するのを忘れる,何度も同じ質問をするなどという具体的な問題行動が軽減されることが期待される.前頭葉損傷の場合には,日常生活において柔軟性の欠如,計画性のなさ,自発性の欠乏,衝動性の増大などが認められる.認知訓練では,このような障害の背後にある遂行機能障害や情動による行動制御の障害をターゲットとして,これに対して訓練が試みられる.本稿では,右側前頭前野背外側部に損傷を持つケースにおける遂行機能障害に対する,Tinker Toyを用いた訓練とハノイの塔(変法)を用いた認知リハビリテーションの方法とその結果を紹介し,生物学的ないしは神経心理学的な立場から若干め示唆を行った.
著者
一ツ松 勤
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.26, no.7, pp.515-522, 2017 (Released:2017-07-25)
参考文献数
29
被引用文献数
1 1

脳血管直達外科手術において, 穿通枝などの虚血性合併症の回避は重要な課題であり, 各種術中支援システムが普及した今日でも, 術者として脳血管解剖に精通することが最も大切である. 穿通枝は血流温存が原則であるが, 盲端化に伴う低灌流時の虚血耐性など未解決な問題点も多い. 本稿では, 直達手術において問題となる網膜中心動脈, 後交通動脈穿通枝 (前視床穿通動脈), 前脈絡叢動脈, 上下垂体動脈, 前交通動脈穿通枝について, 血管解剖学的に考察する.
著者
上野 雅巳 福田 充宏 山根 一和 熊田 恵介 小濱 啓次
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.10, no.6, pp.384-388, 2001-06-20 (Released:2017-06-02)
参考文献数
32
被引用文献数
4 6

頭蓋内解離性動脈瘤の報告は増加しているが, 前大脳動脈領域は稀である.今回クモ膜下出血で発症した右前大脳動脈水平部の解離性動脈瘤を経験したので報告する.術中所見ではA1部は紡錘状に拡張して暗赤色を呈しており, 同部をtrappingした.報告されている前大脳動脈解離性動脈瘤32例のうち22例は男性であった.incidentalにみつかった1例を除くとA1部に発生した11例は全例クモ膜下出血にて発症し, 末梢部に発生した20例中16例は脳梗塞で発症した.女性10例中8例はA1部に発生した.本稿では前大脳動脈解離性動脈瘤の特徴について考察する.
著者
埜中 正博 淺井 昭雄
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.254-260, 2020 (Released:2020-04-25)
参考文献数
25

脊髄髄膜瘤は妊娠早期に行われる胎生期神経管の閉鎖が何らかの理由で障害され, 開いたままになってしまうことで生じる奇形である. 脊髄病変の修復と水頭症に対する治療は出生後から乳児期にかけて行われるが, この時期に治療が完結するわけではない. 特に脊髄病変の修復術後の癒着が脊髄係留を引き起こし, 既存の膀胱機能障害の悪化, 下肢の運動障害や変形, 痛みが生じる例が存在する. 脊髄係留解除術は一部の症例には有効であり, 特に痛みについては術後症状が改善する割合が高いため, この点に焦点を当てて報告する. 脊髄髄膜瘤患者の長期予後を改善させるためには, 脊髄係留の症状を適切に管理する必要がある.
著者
大槻 美佳
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.18, no.3, pp.179-186, 2009-03-20 (Released:2017-06-02)
参考文献数
37
被引用文献数
2 2

脳梁損傷は,たとえ部分の損傷でも,損傷部位によってさまざまな症状が出現する.脳梁で,機能的に重要でない部位はないといえるほどである.しかし,多くの脳梁離断症状は,日常生活に大きな影響を与えることなしに,数週間で改善する.ただし,中には患者の日常生活に多大な影響を与える症状もある.例えば,行為障害や発話に関する障害である.これらに対しては,その障害の評価と適切なアプローチが必要である.本レビューでは,脳梁損傷によって出現する症状を概説し,その脳梁内の解剖学的な関連部位の最新の知見を提供する.