著者
岩崎 勝彦 イワサキ カツヒコ Katsuhiko Iwasaki
雑誌
嘉悦大学研究論集
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.89-107, 2012-03-20

サービス業は、我が国の生産するGDPの7割、また産業別就業者数の7割を占める(2010年)。製造業と比較して生産性の伸びが低いのはやむを得ないが、しかし今後サービス業の生産性をあげ、ものつくりと同様の「成長エンジン」として生産性や収益性を高める必要性があることも事実である。本稿では、ポーターの「ポジショニング論」とは異なる、日本が長年にわたり培ってきた「ものづくり現場」の発想(=『アーキテクチャ(設計思想)と組織能力の組合せ』)からみた「ポジショ二ング」の視点をベースに展開する。これは、所謂「擦り合せ型」ものづくりをサービス業の分野において適用した場合、どのような共通点や相違点があるのか、またその生産過程を調べることによって、収益力にどのように繋がっていくのかを、サービスの特徴を踏まえながら分析することを狙いとしている。身近な事例として、旅館・ホテル業を取り上げ、日本的サービス「おもてなし」が、どのような仕組みで品質を維持・安定させ、同時に収益力とどのように両立するのか、も併せて考察する。