著者
岩崎 未央
出版者
日本プロテオーム学会
雑誌
日本プロテオーム学会誌 (ISSN:24322776)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.61-68, 2021 (Released:2022-01-08)
参考文献数
41

ナノ液体クロマトグラフィー-質量分析を用いるプロテオーム解析手法は,タンパク質の種類・量を網羅的に解析する有効な手法であるが,特定の細胞のタンパク質を1回の分析で網羅的に同定・定量することは試料の複雑さ故に困難であった.我々はこの問題を解決する基盤技術開発に取り組んできた.特に,カラム圧が低いモノリスカラムに注目し,メートル長カラムと緩勾配グラジエント溶出を用いることにより高分離・高感度化を実現し,さらに同重体標識法を組み合わせることで定量確度を向上させるRiMS(removal of interference mixture spectra)法を開発した.この手法を多能性幹細胞解析に応用したところ,細胞種類特異的なタンパク質の定量確度を向上させることが明らかとなった.本稿では,今までの定量的プロテオーム解析を実現させるための方法を俯瞰しつつ,RiMS法について紹介する.