著者
岩本 保典
出版者
一般社団法人日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料學雜誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.414-419, 1987-08-05
被引用文献数
3

大分県飯田高原の標高880m, 傾斜7.2°の厚層多腐植質黒ボク土の傾斜野草地を, 原地形のまま開畑して斜面長20mの圃場を設け, 慣行的なキャベツ栽培条件(キャベツ単作, 6月定植の9月収穫, 上下作畦高畦)のもとで, 土壌侵食誘発要因と侵食量を調査し, つぎの結果を得た. 1. 流出土が発生する限界降雨強度は2.7〜3.0mm/10minであり, 降雨強度と降雨の表面流去率の間には高い正の相関関係があった. 2. キャベツ栽培期間の6〜9月の降水量に対する表面流去率は1984年28%, 1985年34%であった. 梅雨期の大雨の際には表面流去率が大幅に増加した. 3. 6〜9月の流出土量(乾土kg/a)は1982年493, 1983年491, 1984年292, 1985年774kg/aで4年間合計1996kg/a (土層厚で49.6mmに相当する) であり, この流出土量の78%は梅雨期に発生した. 4. 当地域のキャベツ作型は, 6月定植の9月の収穫が最も多い. この場合, 6, 7月の梅雨期のキャベツによる地表被覆率は20%程度であり, 土壌侵食を受けやすい状態にあった. 5. 時間降水量15mm以上の降雨が続く場合には, 一時的な地中停滞水位は地表近くまで上昇しており, 当地域で行われている上下作畦高畦がキャベツ栽培にとって妥当であることを認めた. しかし, この作畦方法は侵食が増大しやすい条件を備えていた. 6. 降雨強度3mm/10min以上の積算降水量およびその降雨の運動エネルギー積算値の単位量当たり流出土量は年々増大した. このことは, 野草地開畑後の年次の進行とともに, 土壌の受食性が急速に大きくなることを示していた. 受食性の増大には, 開畑後の野草残渣量の急激な減少と形状の変化が強く影響を及ぼしていると推定した.