著者
岩本 慎吾 佐野 淳之
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.80, no.4, pp.311-318, 1998-11-16
被引用文献数
6

鳥取大学蒜山演習林の落葉性広葉樹二次林のササ型林床における稚樹の成育様式について解析した。樹高2 m以上の上木の出現種数は25種で, 樹高2 m未満の稚樹はカエデ類を始めとする17種が出現した。チシマザサの桿密度(平均±標準偏差)は23.4±9.0 m^<-2>, 桿高は121.0±14.9 cm, 乾燥重量は453.9±260.5 g・m^<-2>であった。稚樹の分布様式は集中分布で, ササ現存量と負の分布相関を示した。稚樹の樹齢構造より, ウリハダカエデとミズナラに比べ, イタヤカエデ, コハウチワカエデ, ヤマモミジ, ウワミズザクラは耐陰性が高いと考えられた。伸長成長量は, 最も高いウワミズザクラで2.81±1.35 cm・year^<-1>と低く, ササ高を超えるには数十年を要するため, これらの稚樹がササの被圧から抜け出すのは難しいと推察された。稚樹密度のピークは, ササ量指数3,000 cm・m^<-2>(乾燥重量466.3 g・m^<-2>)未満にあり, ササ現存量をこれ以下にコントロールすることが, ササ型林床における天然更新の条件になると考えられる。