著者
岩田(井上) 未来
出版者
佛教大学
雑誌
佛教大学大学院紀要. 社会学研究科篇 (ISSN:18834000)
巻号頁・発行日
vol.37, pp.37-54, 2009-03-01

トランスジェンダーについて,近年「性同一性障害」という診断名によって説明がなされるようになった。その治療は,「彼らは心と体の性別が食い違い,心の性を強制することは不可能なので,体の性を変えて男女どちらかに一致させる」というものである。しかし「トランスジェンダー」として自己表明する人々の語りを詳細に見ていけば,「女」と「男」の二元論では語り得ない人々の存在が明らかになる。トランスジェンダーは性別を移行するだけではなく,性別を乗り越え,否定し,無化し,撹乱する可能性を秘めている。性別が一貫した本質的なものとして捉えられる理由について,Sedgwickのホモソーシャル理論から解釈した。すなわち男性中心社会によって,性の自然性についての言説は支えられていると考えられる。故に「心にも性がある」とする主張もまた,男性中心社会の性別規範に則ったパフォーマンスである。