著者
岩見 憙道
出版者
Japanese Association for Oral Biology
雑誌
歯科基礎医学会雑誌 (ISSN:03850137)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.188-198, 1980 (Released:2010-10-28)
参考文献数
42

口腔連鎖球菌の解糖反応の律速段階を明らかにするため, S. mutans PK1とS. sanguis NCTC10904株の休止菌のグルコース消費速度, 乳酸生成速度, 解糖中間体の菌体内濃度を測定した。これらの測定値から計算した質量作用比と平衡恒数を比較し, S. mutansではATP-グルコースホスホトランスフェラーゼ (AGPT), ピルベートキナーゼおよび乳酸脱水素酵素によって, S. sanguisではAGPTとピルベートキナーゼによって触媒される反応が律速段階であることが分かった。さらにこれら両菌で反応溶液のpHを変化したときの解糖中間体の菌体内濃度の変動から, 酸性pHで解糖速度が減少するのはAGPTにより触媒される反応の阻害のためであること, この阻害はS. mutmsよりもS. sanguisで強いこと, また, S. mutansでのフッ素添加による解糖速度の減少はAGPTとエノラーゼによって触媒される反応の阻害のためであることが考えられた。